最新記事

貿易

レアアースはアメリカではなく日本の問題だ

中国の輸出規制で米レアアース産業の復活を求める声が高まっているが、焦るほどの問題ではない

2010年11月10日(水)18時31分
スティーブ・レバイン

日本は眼中になし 9月の米中首脳会談では尖閣問題も取り上げられなかった Jason Reed-Reuters

 私は先日、ニューヨーク・タイムズ紙の座談会に参加した。テーマは、公害が発生してもアメリカ国内のレアアース(希土類)産業を再生させる必要があるかどうか。私が指摘したのは、いま多くの企業が中国のレアアース輸出規制に対応して動き出しているので、数年後には逆に「供給バブル」が起きる危険があることだ。

 問題は、中国のほぼ独占状態にあるためにレアアースが不足している今と、潤沢に供給されるようになる時までのギャップをどう埋めるか。ロイターも、専門家のインタビューを通じて同じ問題を提起していた。先ごろレアアースの鉱床が発見された韓国のような新しい産出国が、解決のカギを握りそうだ。

 中国は、来年さらにレアアースの輸出を削減するとの報道もある。陳徳銘(チャン・ドミン)商務相は先週、来年の輸出は今年と同レベルだと発言して不安を鎮めようとした。しかしその数日前には商務省の報道官が、来年は輸出がやや減少するかもしれないと発言している。

 私はこの分野の専門家たちに、アメリカでレアアース産業を復活させようと考えるのは妥当か、メールで聞いてみた。

 レアアースを30年近く研究しているカナダの地質学者デービッド・トゥルーマンは、一部のアメリカ企業が不当に不安をかき立てていると語る。米レアアース採掘企業のモリコープは、アメリカでレアアースを生産しないのは軍事戦略上の失策だと主張している。しかし実際は、米軍が使用する特殊な磁石の製造に欠かせないネオジムなどは、供給不足に陥っていないという。


  モリコープは今回の騒ぎに乗じて政府予算を拠出させ、(アメリカ南西部の)モハベ砂漠のレアアース鉱山を再開しようとしている。そうすれば会社の株が売れて、経営陣が儲かるからだ。カリフォルニア州が採掘許可を出すかどうかが注目される。


 レアアースは薄型テレビや携帯端末、スマートフォンなどの製造が盛んに行われる日本や韓国、中国で最も多く消費されている点も、トゥルーマンは指摘する。「アメリカにレアアースの酸化物を必要とする産業があるか? 危機にさらされているのは日本と韓国だ」

 一方、金属の専門家でレアアースに詳しいジャック・リフトンは、レアアースの採掘で生じる環境負荷は誇張されていると語る。


  レアアースの生産が環境に優しくないというのは、メディアが作り出したイメージだ。中国でのレアアースの採掘は環境負荷が大きく、アメリカの基準から見れば遅れているという現実が、そうしたイメージを生んだだけだ。むしろレアアースはグリーン革命のカギになりうるというのに、皮肉なものだ。


 いずれにせよ、中国の輸出制限で困るのはアメリカではなさそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゴールドマン、26年第4四半期の原油価格見通しを引

ワールド

ラガルドECB総裁、BISから14万ユーロ報酬 内

ワールド

イスラエルの中東地域所有権巡る米大使発言、中東・イ

ワールド

違法判決の米関税、24日に徴収停止 米税関当局発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 3
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中小企業の「静かな抵抗」
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 7
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 8
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 10
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中