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貿易レアアースはアメリカではなく日本の問題だ
中国の輸出規制で米レアアース産業の復活を求める声が高まっているが、焦るほどの問題ではない
日本は眼中になし 9月の米中首脳会談では尖閣問題も取り上げられなかった Jason Reed-Reuters
私は先日、ニューヨーク・タイムズ紙の座談会に参加した。テーマは、公害が発生してもアメリカ国内のレアアース(希土類)産業を再生させる必要があるかどうか。私が指摘したのは、いま多くの企業が中国のレアアース輸出規制に対応して動き出しているので、数年後には逆に「供給バブル」が起きる危険があることだ。
問題は、中国のほぼ独占状態にあるためにレアアースが不足している今と、潤沢に供給されるようになる時までのギャップをどう埋めるか。ロイターも、専門家のインタビューを通じて同じ問題を提起していた。先ごろレアアースの鉱床が発見された韓国のような新しい産出国が、解決のカギを握りそうだ。
中国は、来年さらにレアアースの輸出を削減するとの報道もある。陳徳銘(チャン・ドミン)商務相は先週、来年の輸出は今年と同レベルだと発言して不安を鎮めようとした。しかしその数日前には商務省の報道官が、来年は輸出がやや減少するかもしれないと発言している。
私はこの分野の専門家たちに、アメリカでレアアース産業を復活させようと考えるのは妥当か、メールで聞いてみた。
レアアースを30年近く研究しているカナダの地質学者デービッド・トゥルーマンは、一部のアメリカ企業が不当に不安をかき立てていると語る。米レアアース採掘企業のモリコープは、アメリカでレアアースを生産しないのは軍事戦略上の失策だと主張している。しかし実際は、米軍が使用する特殊な磁石の製造に欠かせないネオジムなどは、供給不足に陥っていないという。
モリコープは今回の騒ぎに乗じて政府予算を拠出させ、(アメリカ南西部の)モハベ砂漠のレアアース鉱山を再開しようとしている。そうすれば会社の株が売れて、経営陣が儲かるからだ。カリフォルニア州が採掘許可を出すかどうかが注目される。
レアアースは薄型テレビや携帯端末、スマートフォンなどの製造が盛んに行われる日本や韓国、中国で最も多く消費されている点も、トゥルーマンは指摘する。「アメリカにレアアースの酸化物を必要とする産業があるか? 危機にさらされているのは日本と韓国だ」
一方、金属の専門家でレアアースに詳しいジャック・リフトンは、レアアースの採掘で生じる環境負荷は誇張されていると語る。
レアアースの生産が環境に優しくないというのは、メディアが作り出したイメージだ。中国でのレアアースの採掘は環境負荷が大きく、アメリカの基準から見れば遅れているという現実が、そうしたイメージを生んだだけだ。むしろレアアースはグリーン革命のカギになりうるというのに、皮肉なものだ。
いずれにせよ、中国の輸出制限で困るのはアメリカではなさそうだ。