最新記事

核兵器

核サミットの「成功」とは何か

各国は核テロの脅威について認識を共有しているが、問題は保安体制をどう監視するかだ

2010年4月13日(火)16時44分
ダニエル・ストーン(ワシントン支局)

手土産 オバマと会談したウクライナのヤヌコビッチ大統領は、核兵器に使える高濃縮ウランを2年以内に放棄すると表明(12日、ワシントン) Jim Young-Reuters

 ワシントンの報道陣はこの2日間、到着した要人のニュースや各国首脳のお決まりの写真撮影の予定に忙殺されている。通常、こうした歓迎セレモニーでの会談は双方にとって重要なトピックを簡単に話すだけで、2国間関係が特別に深まることはめったにない。

 しかし、今週ワシントンに集まった各国首脳には、重要な目的がある──核兵器がテロリストの手に渡らないようにすることだ。今回の核保安サミットでは、核兵器保有国や核物質をもっている国を含めた47カ国の首脳らが参加し、核物質の管理体制について協議する。

 この点では国際的な意見は一致している。ほとんどの首脳は、アルカイダのようなテロ組織から核兵器や核物質を守ることの重要性を理解している。しかし、隔たりがある点もある。誰が保安体制の監視をするのか、そしてもし保安体制が破られた場合に当事者の国がどんな責任を負うか、だ。

成果は4年後まで分からない

 2日間のサミットの日程のうち、初日の12日には現在の核不拡散体制の問題点や脅威を特定し、2日目の13日には保安体制を強化する手法を各国首脳が話し合う。

 どんな成果が期待できるのか。一般論としては、核テロが深刻な脅威だと各国が首脳レベルで意識を共有することだろう。しかし、サミットの本当の成果はすぐに証明されるものではない。「サミット終了の夜に、会議が成功だったかどうかは判断できないだろう」と、ハーバード大学ケネディ行政大学院の核専門家、マシュー・バン教授は言う。重要なのは、指導力と(保安体制の)リソースだ。この2つが揃えば、「短期間で核保安体制が大きく進展する可能性がある」

 この目的を達成する上で、大きな障害が2つある。1つ目は、比較的少量の核物質しか持っておらず、自国が核攻撃を受ける心配があまりない国の慢心だ。2つ目は透明性。ほとんどの参加国は、核保安体制を強化することに異論はないだろう。だが、各国が互いの核をどう監視するか、取り決めを守らない国をどうするか、といった問題になると話が厄介になってくる。

「核保有や保安体制の透明性確保に向けて、大国の参加と関与が非常に重要になる」と、米国平和研究所のブルース・マクドナルドは言う。一方で、主権問題に敏感な国に国際的な監視や査察を受け入れるよう強制しなくても透明性を確保できると主張する専門家もいる。各国が保安体制を強化してそれを証明することや、友好国同士が互いの核保安体制を保証するという方法もある。

 明らかに失敗する可能性が低い今回のような会議を開催するのは、政治的に有益だ。しかしハーバード大のバンは、核保安サミットの成果を正確に測るには今後4年間で実際にどれだけの変化があるかを観察するしかないと言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ、ジュネーブで高官協議 ロシア特使も現

ワールド

米イラン第3回核協議で「進展」、依然溝も 1週間以

ワールド

原油タンカーの運賃急騰、イラン情勢受け2020年以

ビジネス

エヌビディア株一時4.8%安、好決算もAI投資巡る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中