ロシアはソチ五輪でも惨敗する
ショートトラックの有名選手タチアナ・ボロドゥリナは昨年、オーストラリアに帰化。スロバキア国籍を取ったアナスタシア・クズミナは、今大会のバイアスロン女子7.5キロスプリントで金メダルを獲得した。
ちなみに北京五輪で女子体操個人総合の金メダルを獲得したアメリカのナスティア・リューキンもロシア生まれ。体操と新体操の往年の名選手だった両親が、コーチ業のためにアメリカのテキサスに移り住んだのだ。
ロシア政府はバンクーバーに向け、この2年間に4700万ドル相当の強化費を投じた。だがセルゲイ・マルコフ下院議員は、カネは有能な人材をロシアに引き止めるために使われるどころか、誤った使途に振り向けられたと指摘する。
箱モノへの投資は進むが...
「カネはスケート場やスキー場に投資される代わりに、メダルを獲得した選手に出す高額賞金のために取り置かれた。アメリカの選手がもらうよりはるかに高額の賞金だ。
その一方でコーチはろくな給料をもらっていない。だから彼らはもっといい給料と待遇を求めて外国に逃げ出すんだ。バンクーバーの失敗は、ロシアスポーツの栄光の終わりの始まりだった」
ソチにおけるインフラ整備に莫大な資金が投じられていることを思うと、ロシアのスポーツ界の人材流出は奇異に映る。このインフラ整備は主に、新興財閥が中央政府への忠誠心を示すために行なっているものだ。
3月初め、ウラジーミル・プーチン大統領は民間(一部の国営企業も含む)からのソチ冬季五輪に向けた投資が165億ドルを超えたと語った。大半が、世界レベルの新しい競技施設の建設に投じられている。
「カネだけが問題ではないが、官僚にはスポーツで金儲けをするのはやめて、スポーツそのものの心配をしてもらいたい」と、タルピシェフIOC委員は言う。
「ソチ大会が失敗する可能性はかなり高いように思える。そしてスポーツは国情を反映するから、(ソチが失敗すれば)愛国主義の失敗と政府のイデオロギーの失敗を意味することになる」
もしそうなれば、ロシア政府はまたも、ウィンタースポーツ大国の崩壊に自ら手を下すことになる。