最新記事

オリンピック

ロシアはソチ五輪でも惨敗する

2010年3月4日(木)18時12分
オーエン・マシューズ(モスクワ支局長)、アンナ・ネムツォーワ (モスクワ支局)

 ショートトラックの有名選手タチアナ・ボロドゥリナは昨年、オーストラリアに帰化。スロバキア国籍を取ったアナスタシア・クズミナは、今大会のバイアスロン女子7.5キロスプリントで金メダルを獲得した。

 ちなみに北京五輪で女子体操個人総合の金メダルを獲得したアメリカのナスティア・リューキンもロシア生まれ。体操と新体操の往年の名選手だった両親が、コーチ業のためにアメリカのテキサスに移り住んだのだ。

 ロシア政府はバンクーバーに向け、この2年間に4700万ドル相当の強化費を投じた。だがセルゲイ・マルコフ下院議員は、カネは有能な人材をロシアに引き止めるために使われるどころか、誤った使途に振り向けられたと指摘する。

箱モノへの投資は進むが...

「カネはスケート場やスキー場に投資される代わりに、メダルを獲得した選手に出す高額賞金のために取り置かれた。アメリカの選手がもらうよりはるかに高額の賞金だ。

 その一方でコーチはろくな給料をもらっていない。だから彼らはもっといい給料と待遇を求めて外国に逃げ出すんだ。バンクーバーの失敗は、ロシアスポーツの栄光の終わりの始まりだった」

 ソチにおけるインフラ整備に莫大な資金が投じられていることを思うと、ロシアのスポーツ界の人材流出は奇異に映る。このインフラ整備は主に、新興財閥が中央政府への忠誠心を示すために行なっているものだ。

 3月初め、ウラジーミル・プーチン大統領は民間(一部の国営企業も含む)からのソチ冬季五輪に向けた投資が165億ドルを超えたと語った。大半が、世界レベルの新しい競技施設の建設に投じられている。

「カネだけが問題ではないが、官僚にはスポーツで金儲けをするのはやめて、スポーツそのものの心配をしてもらいたい」と、タルピシェフIOC委員は言う。

「ソチ大会が失敗する可能性はかなり高いように思える。そしてスポーツは国情を反映するから、(ソチが失敗すれば)愛国主義の失敗と政府のイデオロギーの失敗を意味することになる」

 もしそうなれば、ロシア政府はまたも、ウィンタースポーツ大国の崩壊に自ら手を下すことになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

戦略的互恵関係を推進、国会発言は粘り強く説明=日中

ビジネス

アングル:米株式取引24時間化、ウォール街では期待

ビジネス

英CPI、11月+3.2%に鈍化 市場は18日の利

ワールド

IR整備地域の追加申請、27年に受け付けへ=観光庁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中