イスラエル排斥論の大波紋
占領が長引けば言論統制は拡大?
2つ目のポイントは、今回の一件によって、占領政策がイスラエルに与えるネガティブな影響が浮き彫りになったという点だ。
イスラエル国内で強硬な意見が強まり、世論が右傾化するにつれて、反対意見をもつ人々は排除されたり、国外へ追いやられるようになるだろう。イスラエルへのあらゆる批判は、反ユダヤ主義(異教徒からの場合)か「自己嫌悪」(ユダヤ教徒からの場合)のどちらかのレッテルを貼られる。大学はますます政治色を強め、研究者は「容認可能」な範囲でしか発言しなくなるだろう。
第3に、占領が長引けば、今回のような言論統制もますます増えるだろう。イスラエルとパレスチナの二国家共存という解決策を早急に実現しなければ、イスラエルは占領地域での「アパルトヘイト体制」の運営に行き詰まり、パレスチナ人にさらなる苦しみを課すことになる。
そうなれば、イスラエルや諸外国にいる現状肯定派の人々は現状を維持するために今まで以上に手の込んだごまかしや弁明を必要とし、批判派に対して一段と辛らつな言葉をぶつけるようになるだろう。こうした状況は誰にとってもマイナスだが、二国家共存を探る試みが失敗に終われば、そうなるのは目に見えている。
ちなみに、私自身はイスラエルへのボイコット運動を支持していない。どんなに穏便な形であれ集団的な制裁には賛成できないし、ゴードンと同じく、ダブルスタンダードの問題を懸念するのも理由の一つだ(イスラエルへのボイコットが許されるなら、なぜ中国やビルマへのボイコットはダメなのか)。
それでも、私はゴードンがボイコットを支持した理由を尊重するし、彼の論説を読んでさまざまなことを考えさせられた。もしゴードンが言うように、二国間共存案を実現するにはボイコットしか手段がないとしたら──?
人々に考えるきっかけを与えることも、研究者の大切な仕事のはずだ。
Reprinted with permission from Stephen M. Walt's blog, 25/8/09. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.