「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「フリーランス精子」市場に女性が殺到する理由
A PERSONAL JOURNEY
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<無制限に何十人も子供をつくる男もいる――。法的規制のないネットの精子提供システムを使うのはなぜか。体験記の著者に聞いた>
精子バンクを利用するのではなく、インターネットで見つけたドナー(精子提供者)を介して妊娠を目指す。そんな独身女性やLGBTQ(性的少数者)が増えている。
本誌調査報道担当記者であるバレリー・バウマンは、自分の意思で未婚のまま妊娠・出産する「選択的シングルマザー」を目指してフリーランス(個人間の私的契約)型の精子提供システムの世界に深く入り込み、一連の調査と自らの経験を新著『想定外のこと(Inconceivable)』(書名をクリックするとアマゾンに飛びます)にまとめた。
その可能性と問題点について、本誌メレディス・ウルフ・シザーがバウマンに聞いた。
──最終的にあなたは妊娠を?
いま妊娠中で、出産予定は5月中旬。息子に会うのが待ち遠しい!(編集部注:本記事は3月中旬にニューズウィーク米国版に掲載されたもの)
──妊娠までの道のりで、こうしておけばよかったと思うことは。
私が本の中で「コンキスタドール」と呼んでいるドナー(精子提供者)がいる。私たちは妊娠を試みる一方で、ロマンチックな関係を持とうとした。そのことは後悔している。
──規制のない市場で妊娠を試みる際はさまざまな落とし穴がある。
大切なのは、時間をかけてドナー候補を適切に吟味して、ある程度の信頼関係を築くことだ。精子バンクと違って、自分の子供を形成するDNAの半分を提供する人について、実際に知る機会がある。その利点を生かして、焦ってはいけない。
ドナーの身体的属性ばかり重視して、匿名性を求める人も少なくない。精子は郵送などで送ってもらえばいいとか、実名も聞かずにモーテルで会おうとする人もいるだろう。これはレシピエント(精子の被提供者)にとっても生まれてくる子供にとっても、健全な判断ではない。ドナーが精神的問題を抱えていて、子供に遺伝する可能性もあるのだから。
ドナーから性行為を強要されるケースもある。どうしても妊娠したいあまり、そうした圧力に屈してしまう女性もいる。そんな最低の相手でも、あなたの子供が将来、DNAの検索サイトでドナーとして探し当てたらどうなるだろうか。
個人間でやりとりする「フリーランス精子」の市場には、ただヤリたいだけの不快な男がたくさんいる。自分のDNAをばらまきたい繁殖フェチもいて、子供が何十人もの異母きょうだいといさかいになるかもしれないことなど考えもしない。家族を築こうとする人々を純粋に助けたいという、善良なドナーを見つけるには時間がかかる。
──「スーパードナー」の問題点は。
異母きょうだい間や自分の子孫との関係をつなぐことを全く考えず、無制限に何十人も子供をつくるスーパードナーに、私が話を聞いた多くの子供たちが非常に悩まされている。
ドナーによって生まれた子供の権利はとても厄介だ。アメリカの法制度は、1人の人間が子供を何人持つことができるかについてや、どのような方法で子供を持つかについて形式的な制限を設けることを嫌うからだ。
最終的に、ドナーを慎重に選ぶことは親になろうとする人、つまりレシピエントの責任だ。自らに制限を課し、動機が健全で、生まれた子供に会ったり、健康問題について連絡を取り合ったりする意思のある人を見つけるように努力するべきだ。