子どもの「自信」を育てられる親がすること、しないこと
もちろん、親は誰でも「子どものことは十分に愛している」「あふれるほど愛情を注いでいる」と思っています。しかし、親は十分だと思っていても、子どもには不十分であるケースがほとんどです。この「愛情のすれ違い」に一刻も早く気づかねばなりません。
愛情あふれる目で子どもを見つめて「愛しているよ」とメッセージを送っても、子どもは愛情をまったく実感することができません。言葉で「◯◯を愛しているよ」と伝えたとしても、不十分なのです。
もっとも重要なのが「スキンシップ」で、「肌と肌の触れ合い」が親の愛情を効果的に伝える手段なのです。「ママ(パパ)抱っこ!」と甘えてきた時がチャンスで、ギュッと抱きしめて「かわいい◯◯が大好きだよ!」とベタベタしましょう。
このように親がしつこくベタベタしていると、そのうち子どもが「もうやめてー!」と逃げていくようになります。子どもが親にまとわりつくのでなく、親が子どもにまとわりつくくらいのバランスが、愛情を実感させるにはちょうどいいのです。
ダメ出しが多くなると自信が減退する
根拠のない自信を強固にするには、あるがままの子どもを「受け入れる」ことが必要なのですが、現代社会では子どもの勝手な振る舞いを許すことができない場面が起こります。親から「ああしなさい」「こうしなさい」と指示されたり、「ダメ!」「いけません!」と叱られることが多くなると「根拠のない自信」が揺らいでいくのです。
たとえばデパートなどで、「さわっちゃダメ!」「そっち行っちゃダメ!」と子どもの後を追いかけている親がいます。子どもからすれば、デパートには見たこともない魅力的なモノが溢れています。そんなモノを見ればさわってみたくなるのが人の常です。
でも親は「お店に迷惑をかけないように」と子どもの行動を監視します。さわっちゃダメ、そっちはダメ、あっちもダメ、走っちゃダメ、と「ダメ出し」をされ続けていると、子どもは「自分がダメ」と言われていると思い込んでしまうのです。
公共の場所で走り回る子どもには、頭ごなしに「ダメ!」と言うのではなく、なぜその場所でその行動をしてはいけないのか、言葉で伝えてあげてください。
「ここはお買い物をする場所だよ。走って人にぶつかったり、モノを壊したりしてはいけないよ」と説明すれば、幼い子どもでも必ず理解してくれます。
同様に子どもがぐずぐずしたり、わがままを言ったり、やるべきことをやらない時には「なぜその行動をしなければならないのか」しっかりと説明してあげてください。その上で「自分で考えて行動してね」と付け加えましょう。
過保護は悪いことではない
根拠のない自信は「親から愛され、受け入れられる実感体験」によって育ちます。自信を大きくするには、子どもの欲求をとことん満たしてあげればいいのです。「過保護は悪」という価値観が日本にはあるかもしれません。しかし、親が過保護でなければ、誰が子どもの心を守ってあげられるのでしょうか。
親の仕事は、子どもの行動を制限したり、ダメ出しをすることではありません。手出し、口出し、先回りしたい気持ちをグッとこらえ、子どもを信じて、子どもの自主的な行動を見守ってあげることです。親は甘くて良いのです。
特にこれからのグローバル競争時代を生きる子どもは「自信過剰」くらいでちょうどいいと思います。会社員、経営者、スポーツ選手、アーティスト、どんな仕事でも、競争が激しくなるほど自信がつぶれやすく、足を引っ張る仕組みが山ほどあります。
大きな挫折を経験したとき、子どもの心を支えるのは「あなたが大切な存在である」「あなたには価値がある」「あなたはあなたのままでいい」という、親からもらってきたメッセージです。
失敗しても、欠点があっても、トラブルを起こしても、「決してあなたを見放さない」「いつもあなたの味方」という親のスタンスが、子どもをタフにします。
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。