6歳までがカギ──子どもの「考える力」の育て方
手のかからない赤ちゃんほど注意が必要
おとなしい赤ちゃんだと喜んではいけません。手のかからない赤ちゃんほどコミュニケーションが少なくなり、言葉の発達が遅れる危険があるのです。静かにしているからと放っておいてはいけません。赤ちゃんが起きている時は積極的に声をかけ、親子のコミュニケーションをとることを心がけてください。
「テレビやYouTubeの音声を聞かせておけば言葉は育つのでは?」と考える人がいます。残念ながらテレビやインターネットなど「一方通行の音声」では赤ちゃんの言葉は育ちません。子どもが言葉を身につける時は、信頼できる相手との「コミュニケーション」が必要なのです。
赤ちゃんはお母さんの言葉か別の人の言葉か、生まれた直後から分かるのです。考えてみればこれは当然です。赤ちゃんはお腹の中にいる時からずっとお母さんの声を聞いてきたのです。お母さんの言葉ほど赤ちゃんにとって影響力が強い刺激はありません。
お母さんが「かわいい◯◯ちゃん、おはよう」と話しかけると、赤ちゃんはお母さんの顔をじっと見て「アウゥ、アウゥ」と答えます。赤ちゃんの表情やしぐさから体調や心理状態を見極めて、お母さんが「お腹が減ったのね!今おっぱいをあげますよ」と話しかけます。すると、赤ちゃんは手足をばたばたさせて喜びます。これが「コミュニケーション」です。
一方的に言葉をかけるのではなく、表情、身振り手振り、声のトーンなど五感を通して意思を伝え合う、心を伝え合う、子どもが最初に言葉を身につける時は「互いに気持ちを伝え合うプロセス」が絶対に必要なのです。
もともと親が赤ちゃんに話しかける言葉は「用件」や「指示」よりも「愛情」や「感動」を伝えたいことの方が多いはずです。「◯◯ちゃんは本当に可愛いね」「◯◯ちゃんが生まれてきてくれてママは幸せ!」「◯◯ちゃんは宝物よ!」と愛情溢れる言葉をたくさん受けて育った子どもは「自分は親から愛され受け入れられている」という自尊感情を手に入れることができます。これが将来の「自己肯定感」へと発展していくのです。
絵本の読み聞かせで「想像力」を育てる
子どもの言葉と思考を育てる大切な家庭教育が「本の読み聞かせ」です。親が本を読んであげると、子どもは想像力を働かせてイメージを想起します。ストーリーを頭の中に具現化して、まるで映画を見ているかのようにイメージの世界を楽しめるようになるのです。
本嫌いの子に共通する理由は「面白くない」「頭に入らない」というものです。なぜ本を楽しめないかというと、活字からイメージをうまく想起することができないからです。その結果ストーリー理解や感情移入が深まらず、本の世界の面白さを経験することができません。
現代社会は子どもの周囲に「映像」が氾濫しています。本の世界(イメージの世界)を楽しむ前にテレビや動画などの映像メディアにどっぷりつかってしまうと、自分の想像力を働かせてイメージすることが「面倒くさい!」と感じるようになるのです。
とは言え現実には、子どもから映像メディアを完全に排除することは困難です。ですから、映像に負けないように、親が本の読み聞かせをたくさん行うことが必要なのです。読み聞かせは乳幼児だけでなく、小学生になった子どもの思考教育にも有効ですからぜひ実践してください。
さらに本を読み聞かせながら質問をして、子どもの「考える力」を育てていきましょう。質問のポイントは尋問しないこと。「どこが面白かった?」「誰が好きだった?」と一方的に聞かれると子どもは答える気を失います。
「この続きはどうなると思う?」「○○ちゃんだったらどうする?」「何でこんなことになったんだろう?」というように「想像力を刺激する質問」をして、思考力を鍛えてあげてください。
・才能・特技がないのは子どもの責任? 後天的な「天才」を育てる秘訣
・教育は成功、でも子育ては失敗! 親の仕事は教育ではなく「心を育てる」ことです
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。