エアロビで富と名声を手に入れた女性のサクセスストーリー『フィジカル』
Bringing Back the ’80s
バーンはシーラ同様エアロビの予備知識なしで役に挑んだ ROY ROCHLIN/GETTY IMAGES FOR PARAMOUNT PICTURES
<レオタードや髪形まで80年代を忠実に再現。平凡な主婦の奮闘と自立を描くダークコメディー>
1980年代といえばエアロビクス。「レッツ・ゲット・フィジカル」の歌詞でおなじみのオリビア・ニュートン・ジョンのヒット曲からジェーン・フォンダのフィットネスビデオまで、カルト的ブームが巻き起こった。
アップルTV+で配信中の新ドラマ『フィジカル』は当時を再現。ローズ・バーン演じる主婦シーラがエアロビを通して、生きる目的を見つけ名声と富を手にする姿を描く。
シーラを演じるに当たり、バーンは80年代の「エアロビの女王」たちよりも脚本のアニー・ワイズマンが描く世界を重視したという。本誌H・アラン・スコットがバーンに話を聞いた。
――『フィジカル』に引かれたきっかけは?
パイロット版から心をつかまれた。脚本がすごく私的で、居心地悪くて、ダークで、おかしくて。当時撮影中だった『ミセス・アメリカ』(70年代に男女平等憲法修正条項〔ERA〕の批准をめぐり活動を支えた女性たちを描くドラマ)と同時代の姉妹編みたいな気がした。
シーラは女性解放運動の申し子だったのかも、ベティ・フリーダンやグロリア・スタイネムみたいなフェミニストの先駆者たちを尊敬していたかも、って。
実際のシーラはいろんな意味で幻滅し行き詰まっている。それでも、健康ブームでインフルエンサーや先駆者がもてはやされる今の状況が、実は80年代前半に始まったんだと分かって、興味深かった。
――80年代の女性解放運動の進展をどう描いているか。
結局ERAは批准されなかった。運動が細分化し複雑化するなか、ロナルド・レーガンが大統領になった。60~70年代の価値観の反動だ。最近もオバマ政権後にトランプ政権が誕生し、集団的・世界的な保守的反動が起きた。
当時は多くの女性が経済的自立によって活躍の場を広げようと模索していた。シーラは、それをうまく表現することすらできない。アイデアも野心もあって、いつか私もと思っている。
――80年代ファッションが全開だ。
キャメロン・レノックスの衣装デザインが絶品で、当時を細部まで再現し、パロディーも効いているから、笑えて当然。できるだけそれっぽくって、いつも話していた。写真を見るとヘアスタイルが信じられないくらい大きくて、当時は本当にそうだったらしいけど。