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新型コロナウイルス

家族と会えずに死にゆくコロナ患者たちの「最後の別れ」を助けるケア医の思い

‘I Helped Dying COVID Patients Say Goodbye’

2021年06月17日(木)18時11分
アレクシス・ドラッチャス(マサチューセッツ総合病院緩和ケア医)

私の眼鏡が曇り、涙が頰を伝って落ちてきた。ダニエルは翌日、鎮静剤のためほとんど眠った状態になり、数日後に息を引き取った。

無力感で信念も揺らぐ

トラウマとは、古代ギリシャ語で「傷」を意味する言葉が語源だが、現在は心身に大きなダメージを受けた後に残る「心の傷」と定義される。新型コロナの死者が世界で370万人を超えるなか、巨大なスケールでトラウマ経験が起こっている。

医療従事者のトラウマは、やや独特なものだ。私たちはこの1年間、患者にこれといった治療もできず、彼らが最も深い暗闇にいるとき、一緒にいることしかできなかった。その無力感は、自分の仕事に抱いてきた信念をも揺るがしてきた。

最近はワクチン接種が進み、かつての日常に近いものが戻りつつある。だが私は、この1年間に孤独の中で死を迎えた多くの患者と、彼らが尊厳ある最期を迎えるために私たちがやったことを、決して忘れないだろう。忘れることなどできない。

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