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地球の「最後の氷」を解かさないための闘い

A Wake-Up Call for Humanity

2020年11月10日(火)17時25分
キャスリーン・レリハン

サラに言わせれば、人的被害や経済の落ち込みといった今後何年も続くパンデミックの影響は、自然との関係を壊した結果だ。とはいえ、いいニュースもあるという。自然との関係を立て直す方法は存在する。自然を救えば、人類も救われるのだ。

サラは8月に刊行された著書『自然の本質──人間に野生が必要な理由』で、環境保護は経済面からも支持されるべきだと指摘する。「複数の経済的研究が明らかに示すように、自然保護をより強化した場合、世界経済の総生産が拡大する。私たちが7月に発表した経済報告によれば、少なくとも自然環境保全地域の場合、1ドル投じるごとに5ドルのリターンを得られる」

例えば、地球の30%を自然保護の対象にすれば、膨大な数の雇用を創出できるという。

まだ納得できないだろうか? 今こそ人間は自然にもっと敬意を払うべきだと、サラは言う。野生生物の生息域を侵害するほど、パンデミックのリスクが高まるからだ。

「商品のように動物を世界各地に移動させるのは賢明ではない。誰か1人がこうした動物と市場で接触するだけで、世界中が苦しむことになる」

地球を守るために、普通の人々に今すぐできることはあるのか。「私が常に好んで言うことだが、誰もができて、健康のためになり、地球にとってもいいことがある。毎日でも、できることだ。もっと植物を食べてほしい」というのが、サラのアドバイスだ。

「植物中心の食生活は、家畜の飼育に必要な土地の面積を削減するだろう。結果的に、温室効果ガスの排出量も削減されることになる」。アメリカの場合、畜産用地の総面積は国土の41%に上るという。

「動物性タンパク質がより少ない植物主体の食事をすれば、食糧供給のために必要な土地が減るだろう。不要になった分の土地の一部が自然状態に回復すれば、人類はより多くの恩恵を手にできる」

融解が進む北極海氷や世界に残された野生環境の保護は倫理的責務であり、経済的得策でもあるだけでなく、人類の生き残りに不可欠だと、サラは主張する。

「私たちには野生環境が必要だ。人類の生命維持システムであり、そのおかげで人間は地球上で生きることができるのだから」


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[2020年11月 3日号掲載]

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