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映画気味が悪いくらいそっくり......新型コロナを予言したウイルス映画が語ること
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<現実に酷似していると評判の『コンテイジョン』 。その脚本家が見たコロナ問題と米トランプ政権の失策>
新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大するなか、2011年の映画『コンテイジョン』(スティーブン・ソダーバーグ監督)で描かれた状況が、今の世界によく似ていると注目が集まっている。
未知の感染症が世界的に流行するというストーリーだが、よくある災害パニック映画とは違い、展開は冷徹なまでに論理的だ。脚本家のスコット・Z・バーンズは執筆のため、パンデミック(世界的大流行)について徹底的にリサーチしたという。
「予言」が的中した形のバーンズに、スレート誌映画担当サム・アダムズが話を聞いた。
――『コンテイジョン』を見返す人が急増している。現在のコロナウイルス問題とそっくりな点がいくつもあり、気味が悪いくらいだ。
全くだ。多くの人々が病気にかかって亡くなっていることにショックを受けている。私の中では、映画製作者としてより、人間としての部分で受ける衝撃のほうが大きい。
しかし、驚いてはいない。私が取材した科学者たちはそろって、こうした事態が起きるのは時間の問題だと言っていたからだ。科学者の言うことは聞くものだ。
――トランプ政権では、科学者の意見が通らない状況が続いていた。
信じ難い点がいくつかある。優れた公衆衛生の専門家に対応の指揮を任せていないこと、十分な数の検査キットがないこと、さらにはパンデミックに対する政府の事前対策チームがどういうわけか解散させられていたことも明らかになっている。
映画のための取材で訪ねた疾病対策センター(CDC)の人々は、みんな本当に素晴らしかった。消防隊員が職務に命を懸けている姿を見るのと同じ印象だった。その予算が削減されるなど、脚本家としては想定外だった。
映画が現実のものとなりつつあるように思えるという人には、アメリカの指導者たちが(感染症への)防衛態勢を骨抜きにするとは思いもしなかったと答えている。今の政権そして共和党は、壁を築いて国民を守る話はするが、十分な数の検査キットさえ作れない。それがこの国の現状だ。
――映画に出てくるのは致死性の非常に高いウイルスだが、映画のシナリオは現実よりもはるかに楽観的に思える。
リサーチを進めるなかで学んだことの1つが、公衆衛生の本質とは何かということ。
それは私たちが互いに背負う義務だ。互いに距離を保ち、手をしっかり洗い、体調が悪くなったら家から出ない。この3つは、真っ先に実行すべき実に優れた対策だ。科学的・薬学的な治療法が見つかるまでは、人間こそが「治療法」なのだ。
――映画では、パニックやデマがウィルスのように広がることも描かれている。
映画館で火の気もないのに『火事だ』と叫べば法に触れるのは当たり前だが、実際に火事が起きているのに『安心しろ』と叫ぶのも法に反するはずだ。人命を守るために本当に重要な情報はどんなもので、パニックをあおる情報はどういうものなのか。そうした点について、私たちは慎重であるべきだ。
――あなたは政府が大きな役割を果たすべきだとの考えだ。
感染拡大の初期に手を打たなければ、時間の経過とともに状況はさらに困難になる。株価の行方が本当に心配なら、今すぐ積極的な公衆衛生上の措置を取らなければならない。その場しのぎの対応では、長期的な被害ははるかに深刻になってしまう。
© 2020, Slate
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[2020年3月31日号掲載]