「女子は理数系が苦手」という神話が崩れる日
The Myths About Women in STEM
好き嫌いも生まれつき?
ストゥーとギアリーは、自分たちの尺度は女性が生まれつきどのくらいSTEMを好むかを捉えており、単なる「STEMにおける女性の数」を測定するより適切だと主張。だが彼らの尺度は、2つの点で問題だ。
第1に、STEMに対する女性の個人的な好みを、国境によって大ざっぱに定義される集団としての行動から推測することはできない。第2に、彼らは女性の行動が好みの表れであるばかりか、好みは生まれつきのものと主張する。だが、その好みがどうして生じているのかは分からない。
女性のSTEMの成績と男女平等に逆説的な関係があるのかどうかは、対象にする国や、何を男女平等の尺度にするかによって変わる。45カ国という小規模なサンプルで見れば確かに、世界経済フォーラムの世界男女格差指数でランキングの低い国ほど女性はSTEMで好成績を上げている。だが女性のSTEMの学位取得率と国レべルの男女平等との相関性は、それぞれの尺度が変われば成り立たない。
私たちジェンダーサイ・ラボは女性のSTEMの学位取得率と19年のストゥーらの独自の男女格差指数(健康、教育、生活に対する満足度といった基本的な幸福度を含む別の指数)との相関を調べたが、男女平等との逆説的な関係はなかった。
因果関係の有無は不明
いずれにせよ、各国レべルの男女平等の尺度はどれも、男女平等の動きを評価するには不完全だ。ストゥーらが男女平等の尺度に用いた男女格差指数は本来、女性の地位向上やジェンダーに対する考え方の尺度にすべきではない。
例えばルワンダの場合、15年の男女格差指数は女性の経済・政治参加の高さを反映して6位だった。だが、これは ジェノサイド(大量虐殺)後の男女比の不均衡によるもので、女性の地位が向上したからではない。ルクセンブルクなどについても、STEMの学位を取得する女性の比率が低いことが、男女格差指数のランキングと因果関係があるのかどうかは不明だ。
理系で活躍する女性たちは、女はSTEMに関心がなく能力にも欠けるという根強い主張を押しのけてきた。「男女平等のパラドックス」は、STEMなどでの男女格差は社会的格差ではなく生まれつき、という通説の焼き直しにすぎない。それでも少し掘り下げれば分かるとおり、実際は不自然な尺度と偏ったデータの使用が原因なのだ。
© 2020, Slate
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[2020年3月10日号掲載]