ナルシストと自己肯定感が高い人は似て非なり アメリカのミレニアル世代に見る「ほめる子育て」の落とし穴
ナルシストにしない「ほめ方」とは?
子どもをナルシストにしないほめ方のポイントは2つ。
一つは「自立をほめる」です。「一人でできた!」「人の手を借りないでできた!」という瞬間を見つけてほめるのです。自分で歩けた、自分でトイレに行けた、自分で服を脱げた、自分で靴がはけた、自分で水が飲めた、自分でドアを開けたなど、子どもの「自分でできた!」を見逃さずに声をかけてあげると、自信が大きくなります。
幼い子どもにとって自分の力で何かをすることは「勇気」を要します。勇気を出して行動してみて、それがうまくいったときに「できたね!」と親から認めてもらえると、「自分はできる!」という自信がつき、チャレンジ精神旺盛な性格に育っていきます。
もう一つのポイントが子どもの「良い面を具体的にほめる」ことです。性格面であったり、身体能力であったり、感性であったり、外見の良さでも構いません。
「◯◯ちゃんはパズルが本当に早いね。ママはかなわないわ」「◯◯ちゃんの絵は色の使い方がユニークだね。ママは絶対に思いつかないわ」「◯◯ちゃんは本当にやさしいね。お友だちといつも仲良くできるのは凄いことだよ」と、子どもの持っている良い面を「具体的に」ほめてあげてください。
子どもは自分の長所に自分で気づくことができません。ですから親が子どものよい面を言葉に出して教えてあげるのです。すると子どもは自分の良い面をより強く意識するようになり、実際にその部分が伸びていきます。
【参考記事】「ダメ、ダメ」言い過ぎる母親を生む日本社会で、自己肯定感の低い子にしない最高の方
ほめるときは「本気でほめる」のが原則です。子どもは敏感ですから口先だけでほめても心に響きません。親が子どもの自立や成長や努力に感動したときは、本気でほめてあげましょう。もちろん「ほめる」ためには、子どもの小さな「できた」を見逃さないように、いつも見守ることが大切です。
デジタルネイティブであることや景気低迷を経験していることなど、ミレニアル世代は日本の「ゆとり世代」や「さとり世代」と通じるところが多々ありますが、大きな違いは「自己肯定感」の高さです。
2014年の内閣府の調査では、「自分自身に満足している」と答えた若者の割合は、アメリカが86%、日本は45.8%でした。ほめられて育ったミレニアル世代は、ナルシスト気味ではありますが、自己肯定感が高く、向上心があるのです。
はたしてミレニアル世代がアメリカの政局を動かし、デジタル時代を切り開き、世界に新しい価値をもたらす推進力となるのでしょうか? 2020年はミレニアル世代の動向に注目です!
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[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。
2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。