「世界遺産」に存在した登録の決め手。ユネスコの欧州びいきが生む悪循環
‘World Heritage’ Site Selection Is Eurocentric
自然遺産ははるかに均等に分布しており、「最上級の自然現象、または、類いまれな自然美・美的価値を有する地域を包含する」か、「人類と環境との触れ合いを代表する顕著な見本である」ことが条件だ。
条約締約国の政府は世界遺産候補の歴史、地図、写真、保護計画、科学的・文化的分析などをまとめた何百ページにも及ぶ推薦書を提出。ユネスコの諮問機関による現地調査を経て、ユネスコ世界遺産委員会で審議され最終決定が下される。
煩雑な登録プロセスは行政能力があり学術的・財政的リソースもある政府に有利だ。しかも1980年に比べて、2010年の文化遺産の推薦書は長くなり、専門用語も増えたとの分析結果もある。
ユネスコの諮問機関の元世界文化遺産担当者ヘンリー・クリアーによれば、選抜プロセスも本質的に「西欧本位」で「欧州文化に根差した美的・歴史的観点に従っている」という。その結果、アジアや中南米やアフリカの政府がユネスコの意向により近そうだと考えて、植民地時代の文化的遺産を選んでいる可能性もある。
ユネスコの欧州偏重は世界遺産の将来に深刻な影響を及ぼす。ノートルダム大聖堂への深く普遍的な愛着は再建のための巨額の寄付につながった。一方、古代都市バビロンの貴重な遺跡が03年のイラク戦争後の米軍駐留の影響で損壊した際は、世界が悲嘆に暮れることも寄付が殺到することもなかった。
遺跡を戦禍から守ることはできるなくても、巨額の寄付と世界規模の支援があればきっと役に立ったはずなのに。
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[2019年7月 2日号掲載]