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『ボヘミアン・ラプソディ』を陰で支えた、クイーンの妻たち

2019年02月14日(木)17時10分
有元えり

1月のゴールデングローブ賞授賞式。左からクイーンのブライアン・メイ、ラミ・マレック、クイーンのロジャー・テイラー Mario Anzuoni-REUTERS

<フレディ・マーキュリーとその恋人の関係は映画『ボヘミアン・ラプソディ』の要として描かれているが、フレディ以外のメンバーの妻や恋人たちもまたクイーンサウンドを支える重要な存在だったようだ>

2月10日、ロンドンで開催された第72回英国アカデミー賞(BAFTA)で、クイーンを描いた『ボヘミアン・ラプソディ』が2部門を受賞した。24日の米アカデミー賞授賞式の前哨戦として知られるBAFTAで主演男優賞を受賞したことで、ラミ・マレックのオスカー獲得はさらに有力視されている。監督のセクハラ問題で揺れているとはいえ、5部門でノミネートされた『ボヘミアン・ラプソディ』は今シーズンの顔となる作品といえるだろう。

『ボヘミアン・ラプソディ』は、クイーンの音源を蘇らせ、スクリーンいっぱいに伝説的フロントマン、フレディ・マーキュリーの躍動感あるライブを"完全コピー"したのみならず、フレディの孤独や葛藤を緻密に描いたことで、往年のファンだけでなく新たなファン層の獲得にも貢献した。

とりわけフレディと、その永遠の恋人、メアリー・オースティンの関係は、この映画の要である。コアなファン以外にそれほど存在が知られていないメアリーは、フレディの初期のスタイル――「ビバ」のファッション、黒ネイル、化粧――にさまざまな影響を与え、さらにフレディによる屈指の名バラード「ラブ・オブ・マイ・ライフ」のインスピレーション源にもなった。メアリーはフレディにとってミューズそのものだった。

しかし、クイーンのミューズはメアリーひとりではない。メンバーひとりひとりにラブストーリーがあり、それぞれの妻や恋人の存在なくして、クイーンサウンドは生まれなかったかもしれない。

ブライアン・メイは不倫の末に女優に乗り換え

ギタリストのブライアン・メイは、無名時代から支え続けてくれたモデルのクリッシー・ミューレンと1974年に結婚。一男二女、3人の子どもに恵まれたものの、86年に女優のアニタ・ドブソンと出会い、クリッシーとは88年に離婚。保守的なクリッシーはブライアンに「良き夫、良き父であること」を求め、ショービジネスの世界に理解がなかったとして、価値観の相違が離婚の原因だったかのようにブライアンは後年のインタビューでぼやいている。

その後アニタとは長くつきあった末に2000年に再婚。現在も良好な関係を築いている。アニタは、BBCで現在も放送中の長寿テレビドラマ『イーストエンダーズ』の初期エピソードに出演していたことで知られる、恋多きスター女優。彼女の一言をヒントに、ブライアンが89年に「アイ・ウォント・イット・オール」を書いたことも有名な話だ。「野心家のアニタの口癖をタイトルにしたんだ。全部手に入れたい、いま欲しいのってね」と、ブライアンはコメントを残している。

ちなみに『ボヘミアン・ラプソディ』は、クイーン結成の70年から20世紀最大のチャリティコンサート「ライブ・エイド」が行われた85年までを描いているが、映画の中では前妻クリッシーの存在感は希薄だ。英デイリー・メールによると、プロデューサーが彼女の存在を大人の事情で全面的にカットするよう指示したのだという。

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