メンヘラも自殺も「若い女の子」に限った問題じゃないし、SNSをやり玉に上げるのは止めるべき
SNSは孤独を救う?(写真はイメージ) visualspace-iStock
<研究や調査は、なぜだか女性ばかりをフォーカスする形で実施されている。「ジェンダーの区別は、本題から目を逸らさせるための紛らわしい情報」だ>
イギリス国民保健サービス(NHS)のデータによると、治療が必要なほど「心が傷ついている少女」の数は、1997年の7323人から昨年までで1万3463人に増加。オーバードーズ(薬や麻薬の過剰摂取)による病院への入院者数は、同期間で約10倍に当たる249~2736人まで増えている。(英ガーディアン紙)
このデータは女性に限ったものだが、これが1つのジェンダーに起きているわけではないことを強調したい。
【参考記事】米でうつ病が5年で33%増、その理由は...
若年層のメンタル問題や自殺は、日本でも問題になっている。デジタルデバイスが発達・普及したことで、親や上の世代とは違ったうつ病の原因となる可能性が生まれ、中でもSNSには厳しい視線が向けられている。
2016年、英タイムズ紙は自傷行為と摂食障害による入院患者が3年間で2倍になったことをトップニュースとして報じた。当時のテリーザ・メイ内閣で保健相を務めたジェレミー・ハント(現在は外務・英連邦大臣)は、このときSNSが少女たちに与える悪影響を懸念し、2020年までに学校教育でのメンタルヘルス改善するために1億5000万ポンド(約211憶9000万円)を拠出する方針を固めた。
しかし「この対応は問題の核心をついてはいなかった」と英メトロ紙でメンタルヘルス情報を扱うナターシャ・デボン記者は指摘する。最近の調査によると、SNSの使用方法によっては、メンタルに良い影響を及ぼすことが示唆されたのだ。コミュニケーションツールとしては、潜在的に孤立している若者同士を心の支えとなるコミュニティに結びつけ、メンタルヘルスの改善に役立つという。
このほか昨年には、心理系ニュースサイト「サイコロジー・トゥデー」も、「フェイスブックは良いリソースであり、福祉にプラスの効果をもたらす」というミズーリ大学の研究チームの調査結果を報じていた。
デボン記者は、これまで仕事で多くのティーンエイジャーと話しをしてきた。そのなかで出会ったある少女から、専門的な傷害方法(それが良い意味だったとしても)の記事が引き金となり、インターネットで自傷行為の方法を学んだというケースを紹介している。インターネットに情報が氾濫することで、若年層も容易に危険な情報にアクセスできてしまうのはもちろん問題だが、ここで言いたいのは、インターネットが自傷行為の「理由」にはならないということだ。
「自傷行為は常に何らかの苦痛のコミュニケーションである。したがって、この苦しみの原因を問う必要がある」とデボン記者は言う。