アメリカは「中国封じ」に立ち上がれ
尖閣問題の「成功」に続け
第3に、莫大なコストや中国との全面対決を回避しながらも関与できる方法があるからだ。アメリカが南シナ海の問題に大胆に踏み込む最大の目的は、一方的な領有権拡大は違法であり、多大な代償を払うことになると中国に知らしめることだ。東シナ海では、アメリカはそうしたメッセージを効果的に伝えることに成功している。オバマ政権は13年、中国が東シナ海上空に設けた防空識別圏(ADIZ)にB52爆撃機2機を送り込んだ。
同様に、南シナ海で中国が建設中の人工島周辺に米軍の艦艇や偵察機を送り込むことで、中国の主張の正当性を認めていないという明白なメッセージを示すことができる。
中国との領海紛争を抱える同盟国フィリピンを徹底的に支える戦略も有効だろう。
日本と中国が領有権を争う東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐって、オバマ大統領は「日米安全保障条約の適用対象」だと明言して日本を安心させた。同じように、中国がフィリピン領海に侵入したり、フィリピン軍を攻撃した場合にアメリカがどう対処するのかを公式に表明すれば、中国とその周辺国にアメリカの立場を知らしめる強烈なメッセージとなるはずだ。
4つ目のポイントとして、アメリカの大胆な関与に反対する慎重論の多くが、根拠に乏しいことが挙げられる。例えば、米中という重要な2国間関係にひびが入ることを懸念する声がある。しかし、米中関係を維持することと、地域の安定や法の秩序を揺るがす行為を見逃すことは同義ではない。
国同士の関係は双方向的なものであるべきで、中国がアメリカの国益を損なう行為を続けながら、アメリカが断固たる措置を取らないことを期待するのはおかしな話だ。
注目すべきは、アメリカが現在検討している「高リスク」への対応策を、中国側も既に実施、あるいは検討していることだ。中国は尖閣諸島周辺にたびたび公船を送り込み、尖閣諸島を日本領と認めないというメッセージを発信している。中国国内では、日本とフィリピンのケースを例に挙げて、大国の支持を受けている敵国との領有権争いをどう進めるべきかという議論も行われている。