最新記事

南シナ海

アメリカは「中国封じ」に立ち上がれ

2015年5月27日(水)14時51分
プラシャント・パラメスワラン

尖閣問題の「成功」に続け

   第3に、莫大なコストや中国との全面対決を回避しながらも関与できる方法があるからだ。アメリカが南シナ海の問題に大胆に踏み込む最大の目的は、一方的な領有権拡大は違法であり、多大な代償を払うことになると中国に知らしめることだ。

 東シナ海では、アメリカはそうしたメッセージを効果的に伝えることに成功している。オバマ政権は13年、中国が東シナ海上空に設けた防空識別圏(ADIZ)にB52爆撃機2機を送り込んだ。

 同様に、南シナ海で中国が建設中の人工島周辺に米軍の艦艇や偵察機を送り込むことで、中国の主張の正当性を認めていないという明白なメッセージを示すことができる。

 中国との領海紛争を抱える同盟国フィリピンを徹底的に支える戦略も有効だろう。

 日本と中国が領有権を争う東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐって、オバマ大統領は「日米安全保障条約の適用対象」だと明言して日本を安心させた。同じように、中国がフィリピン領海に侵入したり、フィリピン軍を攻撃した場合にアメリカがどう対処するのかを公式に表明すれば、中国とその周辺国にアメリカの立場を知らしめる強烈なメッセージとなるはずだ。

 4つ目のポイントとして、アメリカの大胆な関与に反対する慎重論の多くが、根拠に乏しいことが挙げられる。例えば、米中という重要な2国間関係にひびが入ることを懸念する声がある。しかし、米中関係を維持することと、地域の安定や法の秩序を揺るがす行為を見逃すことは同義ではない。

 国同士の関係は双方向的なものであるべきで、中国がアメリカの国益を損なう行為を続けながら、アメリカが断固たる措置を取らないことを期待するのはおかしな話だ。

 注目すべきは、アメリカが現在検討している「高リスク」への対応策を、中国側も既に実施、あるいは検討していることだ。中国は尖閣諸島周辺にたびたび公船を送り込み、尖閣諸島を日本領と認めないというメッセージを発信している。中国国内では、日本とフィリピンのケースを例に挙げて、大国の支持を受けている敵国との領有権争いをどう進めるべきかという議論も行われている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界の石油市場、26年は大幅な供給過剰に IEA予

ワールド

米中間選挙、民主党員の方が投票に意欲的=ロイター/

ビジネス

ユーロ圏9月の鉱工業生産、予想下回る伸び 独伊は堅

ビジネス

ECB、地政学リスク過小評価に警鐘 銀行規制緩和に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中