最新記事

アメリカ社会

キャビンアテンダントに高齢化注意報

アメリカでは約30年で14歳アップ、不況が続けば今後さらに上昇する可能性も

2009年6月12日(金)16時51分
ケイティー・ポール

見えない壁 女性のキャビンアテンダントの収入レベルは男性の同僚より低くなった Eric Miller-Reuters

 こんな豆知識を1つ。アメリカでキャビンアテンダント(客室乗務員)の年齢が上がっている。テキサスA&M大学の研究者2人の調査によると、1980年から2007年の間に、キャビンアテンダントの年齢の中央値は30歳から44歳に上昇した。

 アメリカで公民権関連の法律が整備されて年齢や性別、人種による雇用差別が違法となったのは60年代。航空業界は昔から若くてスリムで魅力的な未婚女性を雇いたがる傾向があったが、同法の制定を機にそんな考えは捨てなければならなくなった(当時は体重や未婚の規定もあった)。

 その後、航空業界には一時解雇や雇用抑制の嵐が吹き荒れ、しばしば勤続年数の少ない若い客室乗務員が真っ先に解雇の対象となった。

 キャビンアテンダントの年齢上昇は極端な例ではあるが、労働者の高齢化はアメリカのどんな職場にも共通する傾向だ。アメリカの労働人口の年齢の中央値は、1980年から2007年の間に6歳上昇した。

 キャビンアテンダントの人種は多様化し、男性も増えてきたが、時給の中央値は1980年から2007年の間に26%下がった。一方で、根強く残る女性差別も見え隠れしはじめた。かつて女性アテンダントの収入は同僚の男性アテンダントを上回っていたが(おそらく勤続年数が長いため)、現在では女性アテンダントの収入の方がわずかに低い。

 未曾有の経済危機が続くなか、キャビンアテンダントの年齢層は今後さらに上がるだろう。パイロットや整備士も同様だ(パイロットは6歳、整備士は4歳、年齢の中央値が上がった)。定年を先延ばしにする労働者が増えるにつれて、さらに高齢化が進むかもしれないし、そうなれば健康保険などの負担が航空業界に重くのしかかる。

 となると、ブリトニー・スピアーズがヒット曲「トキシック」のプロモーション・ビデオで扮したような近未来のセクシーなアテンダントは、おそらくお目にかかれないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:トランプ関税でナイキなどスポーツ用品会社

ビジネス

中国自動車ショー、開催権巡り政府スポンサー対立 出

ビジネス

午後3時のドルは149円後半へ小幅高、米相互関税警

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中