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環境問題に立ち向かうオバマの限界

環境保護政策でアメリカの国内をまとめるのは至難の業。ポスト京都議定書の枠組みづくりで指導力は期待できない

2009年4月7日(火)11時39分
デービッド・ビクター(スタンフォード大学法科大学院教授)

 オバマ新政権の誕生が世界から好意的に受け止められているおかげで、アメリカはようやく地球環境問題における「世界の鼻つまみ者」の汚名を返上できるのかもしれない。バラク・オバマ大統領の経済再生計画には環境関連技術への優遇策がたくさん盛り込まれているし、地球温暖化の原因になる温室効果ガスの排出量を削減する方針は世界の喝采を浴びている。

 しかし、ワシントンの政界でホープ(希望)とチェンジ(変革)を実現させるのは簡単ではない。おそらく9カ月後に、世界はオバマ政権に対して大きな失望を味わうことになる。今年12月、国連気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)で世界の指導者がデンマークの首都コペンハーゲンに集まり、2012年に期限が切れる京都議定書後の新たな温暖化対策の枠組みを話し合う。

 このコペンハーゲン会議が期待はずれの結果に終わる可能性が高いのは、アメリカが指導力を発揮できそうにないからだ。オバマ政権が国際的な議論を引っ張るためには、国内でどういう措置が実現可能なのかを把握しておかなくてはならない。しかし、アメリカで環境保護政策を導入することは非常にむずかしい。その点は、ホワイトハウスと議会の両方を民主党が制していても変わらない。

 環境問題に関して、アメリカは一つの国とは言いがたい。環境保護を推し進めたいと考える速度は州によってまるで違う。それでも70〜80年代のアメリカが環境保護で世界の牽引役になれたのは、超党派の立法により国として一貫性のある政策を打ち出せたからだ。

民主党が足を引っ張る

 アメリカの主だった環境保護関連の法律のほとんどは、いつも環境保護を訴えている左派だけの力で誕生したものではない。むしろ共和党政権が中道志向を強めた時期に、民主党と協力して法律をまとめたケースが多い。

 画期的な大気と水質の浄化法が成立したのは、共和党のニクソン政権の時代だった。同じ共和党の父ブッシュ政権の下では有害な大気汚染物質の規制を強化する法律ができたし、2期目に入って中道寄りになったレーガン政権はオゾン層保護のための国際条約作りの旗振り役になった。

 90年代半ば以降、こうした超党派の取り組みはほぼなくなった(90年代半ばといえば、民主党の大統領と共和党主導の議会の対立で予算成立が遅れ、政府機能が停止する事態が起きた時期だ)。国家レベルの本格的な政策が打ち出されない空白期間が10年近く続く間に、環境保護志向の強い沿岸部の州は独自の温室効果ガス排出規制を強化していった。その半面で、アメリカ全体としては環境問題での指導力が弱まってしまった。

 温暖化対策でオバマ政権に求められるのは、州レベルのさまざまな規制を一つにまとめ上げることだ。だが、それはとうてい簡単なことではない。コペンハーゲン会議を前に、国内で幅広い超党派の合意を取りつけ、しかも世界が新政権に期待する大幅な排出削減に踏み込む政策を打ち出すことはきわめてむずかしい。

 障害は、環境保護規制に強い警戒心をいだく保守的な共和党政治家だけではない。思い切った国家レベルの環境保護政策を打ち出すうえで最も妨げになるのは、雇用と経済成長への影響を恐れる中道派の民主党議員グループだ。

 中国やその他の途上国と合意をまとめて、途上国も犠牲を払っているのだとアピールできれば、国内をまとめるうえで強い後押しになる。しかし、そのための本格的な努力はまだ始まったばかりだ。

京都の過ちを繰り返すな

 コペンハーゲン会議の重要な課題は、温暖化対策の機運に冷や水を浴びせないことと、09年という京都議定書見直しの非現実的な「締め切り」に縛られずに交渉を続ける道を見いだすことだ。

 アメリカが温暖化対策に本腰を入れるのが遅れることは、悪いニュースではない。京都議定書の交渉の際は、当時のビル・クリントン米大統領が性急にことを進めようとして、国内を説得できる見通しもないのに大幅な排出削減を約束。その結果、後任のジョージ・W・ブッシュ前大統領があっさり議定書から離脱する道を開いてしまった。

 この過ちを繰り返せば、アメリカが国内の支持固めにてこずったために温暖化対策がしばらく先延ばしになるよりも、はるかに悪い結果を招く。12月に大きな成果があげられなくても、それはやむをえない。本当に必要なのは、実効性のある環境保護政策であって、中身を伴わないスローガンではないのだから。  
     
 (筆者は、スタンフォード大学「エネルギーと持続可能な発展」プログラムの責任者)

[2009年3月18日号掲載]

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