半透明の幽霊タコ? 激レア「キャスパー」タコ発見
Adorable Octopus So Rare It Doesn't Have a Name Among New Seamount Images
深海の宝庫...ナスカ海嶺で新種と希少種が続々発見される理由(写真はイメージです) Stefano Pollio-Unsplash
<南太平洋の深海で、お化けのように半透明な姿の激レア「キャスパー」タコが発見された。シュミット海洋科学研究所率いる調査団が明らかにしたもので、他にも新種の深海生物が続々と見つかっている>
アメリカのシュミット海洋科学研究所率いる調査団が、これまで知られていなかった海山を南米チリから約1448キロに位置する南太平洋のナスカ海嶺で発見し、地形図を作成した。
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ナスカ海嶺の豊かな生態系
海底山脈が連なるナスカ海嶺は、サラスイゴメス海嶺とともに、公海海洋生物保護区の指定候補となっている。この海嶺には、まだ正式名称がないほどの希少種も含め、深海の豊かな生態系が存在する。
新たに発見された海山の比高は3109メートル。28日間にわたって実施されたナスカ海嶺の公海探査の大きな成果だった。海山の地形図作成に加え、調査団が水中ロボットで行った潜水探査では、カイメンの庭園や太古のサンゴなど豊かな生物多様性も明らかになった。
「今回の探査で、これまでの150種に加えて新たに20種の新種が見つかった。加えて、世界のこの地域ではこれまで見つかっていなかった約80種も発見した」。シュミット海洋研究所事務局長で今回の探査の共同チーフサイエンティストを務めるジョティカ・ヴィルマーニは本誌の取材にそう語った。
南太平洋で初めて観察されたタコの「キャスパー」も新しい発見だった。「キャスパーという呼び名はお化けにちなむ」とヴィルマーニが説明する通り、このタコは半透明のお化けのような姿をしている。
キャスパーはまだ捕獲されたことがなく、現時点で分かっていることは全て目撃情報のみに基づく。
「実際に捕獲されたことはない。あるのは目撃情報のみ。この可愛らしいタコは生きた標本が存在しないことから、本当はどんな種で、どんな特徴があるのかほとんど分かっていない」とヴィルマーニ。研究者を魅了し続けているにもかかわらず、物理的な標本がないためにまだ学名もなく、「今のところ、キャスパーという仮の名で呼ばれている」と説明した。
タコのキャスパーは深さ4443メートルの深海で観察された。
次々と姿を表す貴重生物
調査団は、ダルマイカ科のイカの生きた映像を撮影することにも今回初めて成功した。この種類のイカは死骸の標本が少数存在するだけの希少種で、古いものは1800年代にさかのぼる。
ほかにも通称「空飛ぶスパゲティモンスター」と呼ばれるクダクラゲの仲間の希少種など、深海のユニークな生物が見つかった。クダクラゲは自己複製する個虫が集まって群体を作り、互いに連携しながら単体として生息する。
ヴィルマーニはクダクラゲの撮影について「この生物の極めて希少な映像と写真」と形容した。
この海嶺で発見される新種や希少種は、探査を重ねるごとに増えている。
「イソギンチャク、ウニ、軟体動物、コシオリエビなど、幅広いさまざまな新種がいる」とヴィルマーニは言う。
「非常に印象的なサンゴ礁もあった。新種のサンゴの可能性もある。さらに、もしかしたら、完全には確認されていないものの、クジラの新種の可能性もある」
ヴィルマーニによると、新種と思われるクジラは生体ではなく化石が採集された。「まだかなりの分析が必要だが、可能性はある」という。
探索の目的は「海底地形図の作成」にもあり
今回の探査では、新種の可能性がある種が新たに20種採集され、この海域で確認された海洋生物は増え続けている。前回までの探査では1019種の生息が確認されており、今回の探査で1300種を超えた。
だが調査団の主な目的は、希少な海洋生物の発見に加え、海底地形図の作成にあった。
「グーグルマップを見ればさまざまな特徴や地形が表示されるので、完全な海底地形図があると誰もが思う。けれど現実には、地図の解像度は1キロと極めて粗い」とヴィルマーニは解説する。
「これまでのところ、高解像度で地形図が作成されたのは海底の約26%にすぎない。生物多様性のホットスポットがどこにあるかを探るためには、土台としての地図が必要だ」
新しい地図は、ニューハンプシャー大学の沿岸・海洋マッピング/合同水路測量センターを卒業した水路測量の専門家チームが作成。解像度は数十メートルまで向上させた。
このデータは「日本財団-GEBCO Seabed 2030」プロジェクトに提供され、ナスカ海嶺とサライゴメス海嶺に関する世界的な研究と管理に役立てられる。
「我々の発見は、こうした生態系の驚くべき多様性に脚光を浴びせると同時に、海山の生態系の相互のつながりに関する我々の認識の溝を浮き彫りにした」。共同チーフサイエンティストでシュミット海洋研究所の海洋技術者トマー・ケッターはそうコメントしている。
「こうした探査で収集したデータが将来の政策に役立てられ、この手つかずの環境が未来の世代のために保全されることを期待する」
(翻訳:鈴木聖子)
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