最新記事
両生類

毒ガエルの交尾の秘密...オスの「腫れた指先」がメスを操る?

During Sex, Male Frogs May Use 'Swollen Fingertip' To Stimulate Females

2024年8月14日(水)12時50分
ジェス・トムソン
ヤドクガエルのオスの不思議な指先の役割とは Zachary Spears-Unsplash

ヤドクガエルのオスの不思議な指先の役割とは Zachary Spears-Unsplash

<ヤドクガエルのオスが交尾中にメスの行動を変えるためにフェロモンを伝える驚きの方法が明らかになった>

科学者たちは、毒ガエルの交尾に関する奇妙で風変わりな特徴を発見した。

【画像】毒ガエルの交尾の秘密...オスの「腫れた指先」がメスを操る?

学術雑誌「モレキュラー・エコロジー」に掲載された新たな研究論文によると、一部の毒ガエルのオスは交尾の際に「腫れた指先」を使ってフェロモンをメスに伝え、メスを交尾に対してより受け入れやすくしたり、交尾後の行動を変えたりする可能性があるという。

交尾中に「腫れ上がる」指

この論文では、一部のヤドクガエルのオスが、交尾の際にしばしば指の一部が腫れ上がる様子を描写しており、その指を交尾中にメスの鼻の近くに置くことがあるという。

研究者たちは、オスがこの球状の腺からなんらかのフェロモンを雌に伝達しているのではないかと疑っている。

「一部のヤドクガエルでは、膨らんだ指が頭部抱接と同時に起こります。オスは後ろから雌にまたがり、手の甲側、つまり指の膨らんだ部分が雌の鼻孔のすぐ近くに来るように、雌の頭の両側に手を緩く置きます」と研究者たちは書いている。現時点では、頭部抱接の機能は分かっていませんが、フェロモンとして作用する腺分泌物の伝達を助けるのではないかと推測されています」

フェロモンとは、動物が生産・放出する化学物質であり、コミュニケーションにおいて重要な役割を果たし、交尾、縄張りのマーキング、警報シグナル、社会的な組織化など、さまざまな行動に影響を与える。多くの動物は、潜在的な交尾相手を引き寄せたり、縄張りを示したり、危険を警告したり、親と子供の間の絆を強化するために、性フェロモンを放出する。

しかし、カエルにおけるフェロモンの使用については、これまであまり詳細には研究されておらず、彼らは主に音声を使ってコミュニケーションを行うと長い間考えられていた。

フェロモンがメスに与える効果

研究者たちは、これらのカエルの腫れた指を解剖し、その中のRNAを分析して、フェロモンを生成しているかどうかを調べた。その結果、この指が確かにサラマンダーでよく知られているフェロモンシステムである「ソデフリン前駆体様因子(SPF)」と呼ばれる化学物質を生成していることが明らかになった。

他の種では、SPFはメスの交尾受容性を高め、求愛期間を短縮することが確認されている。

「我々の研究は、ヤドクガエルにおいて、腫れた指がSPFを強く発現し、両生類におけるフェロモン機能を持つタンパク質ファミリーであることを初めて示した」と彼らは論文に書いている。「全体として、両種において腫れた指でSPFが高く発現していること、そして頭部抱接が見られることから、コロステチン亜科およびヒロキサル亜科(約141種)のメンバーに広く見られるこれらの特徴が、求愛中の化学信号に関与していることを支持している」

この論文は、オスが交尾中に鼻孔を通じてメスにフェロモンを伝えていることを確認するものではないが、カエルがこれらのフェロモンを使ってメスの行動に影響を与えている可能性が強く示唆されている。

「フェロモンの生成に加え、アンソニーヤドクガエルのように、頭部抱接と組み合わされた場合、腫れた指はフェロモンの伝達に重要である可能性がある」と彼らは書いている。

研究者たちは、これらのフェロモンがメスに与える正確な効果については確信が持てていないが、メスの産卵行動や交尾受容性に影響を与える可能性があると示唆している。

「我々は、カエルにおけるSPFの機能を明らかにし、オスのSMG分泌物に対するメスの行動的および生理的反応を特定するために、さらなる研究が行われることを期待している」と彼らは書いている。「さらなる研究が必要であり、SPFタンパク質が繁殖中にメスにどのような影響を与えるのかを解明する必要がある」

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

FIFAがトランプ氏に「平和賞」、紛争解決の主張に

ワールド

EUとG7、ロ産原油の海上輸送禁止を検討 価格上限

ワールド

欧州「文明消滅の危機」、 EUは反民主的 トランプ

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中