水害対策だけじゃない? 調節池は平常時にどう活用されているのか
調節池などの設置が進んだことで、浸水被害は着実に減少した。しかし、令和元年東日本台風(第19号)では、記録的な豪雨により、都内の7河川が溢水し、浸水被害が発生した。
さらに、日本全国に目を向けると、岡山県や熊本県に甚大な被害を与えた水害も記憶に新しい。水害は、いつどこで起きてもおかしくはないのだ。被害を防ぐためにも、東京都では水害対策を重要課題のひとつとして、さまざまな取り組みを推進している。
エンタメ要素を持たせて調節池の認知度アップへ
東京都は令和元年より、地下トンネル式の「神田川・環状七号線地下調節池」の施設内をめぐる、インフラツアーをスタート。当初は、施設の設置予定地付近の住民をはじめ都民へ向けて、調節池の必要性とその効果について理解を促すために始まった取り組みだったが、近年流行している「大人の工場見学」のひとつとして、思わぬ話題を呼んだ。
現在、ツアーは一時中止となっているが、東京都建設局河川部計画課長の小田中光氏によると、「神田川・環状七号線地下調節池は、コロナ前はインフラツアーを含め年間約6000人を超える見学者がある人気の施設でした」という。
インフラツアーと同時にスタートしたのが、「IKEカード」だ。ダムカード同様、訪れた調節池等で1枚ずつ無料配布されており、該当する調節池の特徴などが記載されている。こちらも好評で、SNS等で入手報告が多数見られたという。
東京都は、ただ調節池を設置しているだけではない。インフラツアーやIKEカードなどのエンタメ要素を含んだ取り組みにも力を入れ、調節池の必要性や防災意識の向上に取り組んでいる。こういった地道な活動が、東京に住む人々の意識を変え、行動を変えることにつながるのだろう。
取材・文/安倍季実子 写真提供/東京都建設局河川部