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新型コロナウイルスオミクロンは「最後の変異株」なのか、英専門家が解説
THE FINAL VOC?
NiseriN-iStock.
<爆発的な感染力を持つオミクロン株が教えてくれる、新型コロナ・パンデミックの終わりの始まり。ウイルスの「改良」は永遠に続くわけではない>
ウイルスは生きているのか。この問いについては専門家の間でも議論がある。
だが、ウイルスが生物と同じように進化するのは間違いない。それは、2年にわたる新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、数カ月おきに「懸念される変異株」が登場してきたことからも明らかだ。
その一部は、ヒトからヒトへと広がるのがうまく、のろまな変異株を追い抜いて、世界で支配的な変異株の座に就いた。
これは、ウイルスの表面にあるスパイクタンパク質に突然変異が生じて、宿主細胞のACE2受容体タンパク質と結合する(そして細胞に侵入する)能力が高まるためと考えられている。
アルファ株やデルタ株は、そうやって瞬く間に世界に広がった。そして、オミクロン株も同じようになると専門家は考えている。
とはいえ、こうしたウイルスの「改良」は永遠に続くわけではない。
生化学の法則では、スパイクタンパク質は最終的に、ACE2と最も強力に結合できる形に進化する。その一方で、ウイルスの伝播能力は、ゲノムの複製スピードや、宿主細胞への侵入を促進する酵素TMPRSS2の活性レベル、そして感染者のウイルス排出量といった要因によって制限されるだろう。
理論的には、これら全ての進化を総合して、ウイルスの威力はピークに達する。
では、オミクロン株はこのピークなのか。
残念ながら、そうは思えない。
新型コロナウイルスの機能獲得研究、つまり、より効率的に広がるために生じ得る突然変異を研究するチームによると、スパイクタンパク質にはオミクロン株にはまだない突然変異の余地が多分にあるという。それに、前述のゲノム複製といった部分の改良もあり得る。
とはいえ、仮にオミクロン株が新型コロナウイルスで最高の伝播能力を持つ変異株だとしても、ひょっとすると遺伝的な制約から、このウイルスはオミクロン株以上には進化しないかもしれない。
いくら捕食動物から逃れなくてはいけなくても、シマウマの後頭部に目ができる進化が起こらなかったように、新型コロナウイルスも理論的最大量に達するためには必要な突然変異の全てを一度に起こす必要があり、それは起きないと考えるのが妥当だろう。
従って、たとえ伝播能力の点でオミクロン株が新型コロナウイルスの最高の形だったとしても、宿主の免疫系を回避するために、新たな変異株が出現し続ける余地はある。
ひとたびウイルスに感染すると、免疫系は、ウイルスと結合して感染を防ぐ抗体(中和抗体)と、ウイルスに感染した細胞を破壊するT細胞を生成して適応を図る。中和抗体は、特定の分子形状のウイルスと結合するタンパク質で、T細胞も分子の形状によって感染細胞を特定する。
従って、免疫系が認識できないほど分子形状が進化すれば、ウイルスは免疫反応を擦り抜けられる。
オミクロン株が、いわゆるブレークスルー感染に成功してきたのはこのためだ。
ACE2と結合しやすくするスパイクタンパク質の突然変異は、感染を防ぐ中和抗体の能力を低下させた。
ただ、ファイザー社のデータによると、感染細胞を破壊するT細胞の機能は衰えていない。このことは、ほとんどの人が免疫を持つ南アフリカでは、オミクロン株感染者が急増しても、致死率は抑えられた事実と一致する。
感染に気付かないほど軽症に
人類にとって重要なのは、新型コロナに一度感染した人は、重症化しにくいらしいことだ。
それは、当初のように重症化しないなら、ウイルスの自己複製と再流行を許容するという「妥協点」を私たちにもたらす。
おそらくウイルスにとっても、未来はそこにある。
ピークに達したウイルスは、免疫系によって防衛されたり、排除されたりするようになる。その後はランダムに突然変異を遂げ、それが蓄積して免疫系が認識できないほどになると再流行を引き起こす。
今後はインフルエンザのように、毎年冬になると新型コロナウイルス感染症が流行するようになるかもしれない。
インフルエンザウイルスも「抗原ドリフト」と呼ばれる突然変異の蓄積を経て再流行を引き起こす。ただし、新たに流行する変異株が、前年の変異株より強力とは限らない。
新型コロナウイルスもこのような結果を迎える可能性は十分ある。既に229Eという、「普通の風邪」を引き起こすコロナウイルスが存在することが一番の証拠だ。
オミクロンは、新型コロナウイルスの最後の変異株にはならないが、最後の「懸念される変異株」になる可能性はある。
運がよければ(つまり確実ではないが)、新型コロナウイルスは、時間をかけて少しずつ変異し、地理的にも期間的にも限定的に流行する感染症になるだろう。
多くの人が幼少期に感染して(ワクチンの接種有無を問わず)、その後再感染したときは、ほとんど重症化しない穏やかな疾病になる可能性も高い。再感染に気が付かないほど症状は軽いかもしれない。
新型コロナウイルスの遺伝子変化を長期にわたり追跡するのはごく一握りの科学者になり、「懸念される変異株」は過去のものになるだろう──少なくとも、新たなウイルスが種の壁を飛び越えてくるまでは。
Ben Krishna, Postdoctoral Researcher, Immunology and Virology, University of Cambridge
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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