最新記事

AI

対決 AI vs 人間 勝利を手にしたのはどっちだ!?

2021年3月26日(金)19時52分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

newsweek_20210326_193115.jpg

AIと投資対決をした"マッハセブン"ことハン・ボンホ氏は10年間で7000倍の利益を生み出した韓国のカリスマトレーダー。 SBS NOW / YouTube

そんなRASSIに対決を挑むのは、1999年に100万ウォンで投資を開始し、1年で8600万ウォン、その後10年で約70億にしたというカリスマトレーダー"マッハセブン"ことハン・ボンホ氏だ。証券会社が集まって行なわれる模擬投資大会では毎回1位を獲得し、これまで8回優勝している強者である。

対決方法はいたって簡単なものだった。各自1億ウォンの投資金で2020年8月31日から9月25日の4週間自由に投資をする。1か月後利益が高かった者が勝者(税金・手数料含む)となる。ところが、この4週間の間に米国株式市場の下落が起こり、その影響でなんとKOSPI(韓国総合株価指数)がおよそ1カ月ぶりに2300を割るという緊急事態が発生。そんなドラマティックな展開もありつつ、視聴者は対決の行方に引き込まれていった。

AIに有利なはずの高速取引で人間が勝利!?

もちろん、投資とは長期で利益を考えるものではあるため、たった4週間の結果で勝敗を決めてしまうのは安易ではあるが、ひとまずこの対決では人間が勝利に輝いた。4週目の9月25日最終利益率、AIのマイナス0.01%に対してマッハセブン氏の利益率はなんとプラス40.14%も出すことに成功したのだ。

RASSIは序盤に利益率が上がったものの、中盤から伸び悩みをみせた。株式は社会の動きと深く繋がっている。マッハセブン氏によると特に韓国の株式市場は反動が激しいそうだ。そのため、数秒から数分レベルで売買を繰り返して小さな利益を積み重ねるスキャルピング手法で取引しているという。一方RASSIは1億ウォンを50品目で分け200万ウォンずつ投資する分散投資を行った。この違いが勝敗を分けたようだ。

韓国ゴルフブームの火付け役パク・セリがAIと3本勝負

newsweek_20210326_193833.jpg

メンタルが結果に影響すると言われるゴルフでパク・セリはAIに勝てるのか? 달리 [SBS 교양 공식채널] / YouTube

今回の番組を通し、AIとの対決とは言いながらも近未来どのように共存していけるかを考えさせられる場面も多かった。ゴルフ対決では、アメリカからやってきたAIゴルファー「エドリック」と、韓国が誇る元女子プロゴルファーのパク・セリとのホールインワン、ロングドライブ、パッティングの3本勝負が行われた。

AIエドリックは韓国の強風に悩まされたが、結果はロングドライブ以外を制したAIの勝利となった。実はこのAIエドリックは対決用などではなく、本来スランプに陥ったゴルファーに以前の姿を見せて、スランプ脱出させるために作られたトレーニング用システムなのだという。AIの可能性はまだまだ無限に広がっている。

そのほかの結果はどうなったのだろうか? モンタージュ対決では、なんと映画にもなった「梨泰院殺人事件」の実際の犯人であるアーサー・パターソンの声だけを聞き似顔絵作成が行われた。モンタージュ専門家ルイス・ギブソンとAIが声だけで描き上げたモンタージュは両者ともにそっくりで、スタジオのパネラーたちも驚きを隠せなかった。こちらの勝負は甲乙つけがたく引き分けとなった。

最後に、プロファイリング対決では中国と東南アジアの空港で既に導入され、韓国でも警察庁でウソ発見器として試験運営しているというAIが登場。韓国ではすでに有名なベテランプロファイラー、クォン・イルヨンと5人の容疑者の中から真犯人を探し出す対決内容だったが、なんと両者とも見事に犯人を探し当て引き分けに終わった。

勝負は互角、ますます人間に近づくAI

このAI対決、全体を通してみるtとAIと人間は今のところ互角といえるようだ。これまで人工知能について、覚え込ませたデータを整理し形にする能力がすさまじく速いマシンぐらいの認識だった。しかし、今回の作曲対決などを見ると、AIはますます人間に近づいていることを実感した。

この素晴らしく有能なマシーンであるAIを、今後どのように活用していくかが重要でありこれからの課題だろう。あまりにも頭がよすぎるAIたちに、人類が愛想をつかされてしまう日が来るとも限らない。そうならないように、我々も常にアップデートが必要である。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウィットコフ米特使、来週モスクワ訪問 ウクライナ和

ビジネス

午後3時のドルは156円前半でほぼ横ばい、日銀早期

ビジネス

中国万科の社債急落、政府支援巡り懸念再燃 上場債売

ワールド

台湾が国防費400億ドル増額へ、33年までに 防衛
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中