最新記事

セキュリティ

韓国、マップアプリからAIチャットまで1120万人超の個人情報ダダ洩れの恐怖 

2021年2月1日(月)20時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

20歳の女子大生という設定のAI「イルダ」はメッセンジャーサービスKakaoTalkのメッセージからこっそりディープラーニングしていた? SCATTER LABのWebサイトより

<AIとのチャットを楽しんでいたら、突然AIが自分の銀行口座を言ってきたら......>

昨年、日本で個人情報の漏洩・紛失事件は103件に上り、2515万人以上の個人情報が流出したという。

最近では、埼玉県が25日の夕方から5時間にわたり「新型コロナウィルス感染者」191名の個人名簿を公開してしまうというとんでもない流出事例も発覚した。

一方で、ネットサービスが生活に行きわたっている韓国でも個人情報の保護が課題となっている。

1月27日、韓国個人情報保護委員会は、昨年深刻な個人情報流出事件を起こしたテスラ・コリア、ネイチャーリパブリック、SD バイオテクノロジーズ、シー・トリップ・コリアの各社に、個人情報保護法(情報通信網法違法第27-28条)違反として6270万ウォンを求め話題となった。

クルマのダッシュボードに携帯番号を貼り付ける韓国社会

もともと韓国は、日本に比べると個人情報保護の認識が甘い方だ。個人の携帯電話を会社の名刺になんの躊躇なく記載したり、路上駐車するときに車のフロントガラスに携帯番号を張り付けたりする韓国人も多い。個人情報であっても便利であれば表に出すという合理的な考え方だ。

しかし、ここ最近韓国でもネットや企業から個人情報が流出する事件が増え、問題意識が高まっているように感じる。

韓国でメッセンジャーサービスで95%以上のシェアを誇る超人気アプリといえば「KakaoTalk」だ。しかし、ここ最近このKakaoTalkがらみの深刻な個人情報流出事件が続いている。

もともとは、LINEのような無料のメッセンジャーサービスだが、他にも電子決済のKakao Payやタクシーの配車アプリKakao Tなど便利なさまざまなサービスを展開し、韓国人の生活と強く結びついているだけに深刻視されている。

今回、その数ある機能のうち約500万人以上の人が利用しているという地図情報サービスKakaoMapから個人情報が流出した。

KakaoMapは、文字通り地図機能のサービスだ。利用者がよく行く場所や自宅などをブックマーク保存しておくことができるのが特徴である。ところが、このブックマークした場所が全体公開になっており、誰でも他人の情報が閲覧できるようになっていた事実が発覚した。

お店やレストランはもちろん、自宅や友人、恋人、家族の住所がアパートの部屋番号まで記載され公開されていた。なかには軍部隊の住所と正確な位置までもが表示公開されていたという。

ユーザー・インターフェースの悪さが原因に

newsweek_20210201_194843.jpg

KakaoMapはブックマークボタンのUIの悪さが個人情報ダダ漏れの原因に。MBN News / YouTube

なぜこのような事態になってしまったのだろうか。KakaoMapでは、利用者がブックマークのボタンを押すと保存するフォルダーの名前を入力する手順になっているが、このときに情報を一般公開するかしないかを選ぶことができる。ところが、その選択ボタンが文字入力キーボード部分に隠れてしまううえ、基本設定では全体公開になっていたため、利用者は気づかないうちに自分のブックマーク情報をたれ流していたのだ。

非難の声が高まるとKakaoはすぐにKakaoMapの基本設定を非公開にした。ところが、これは新規でインストールしたアプリにだけ適用され、すでにインストールして利用している人は個別に手動で設定しなければならない状態だった。

先月15日、この対応について韓国個人情報保護委員会から指摘が入り、その後Kakaoは既存のKakaoMap利用者のアプリでもすべて非公開になるよう設定変更した。個人情報保護委員会は引き続きKakaoMapが個人情報などで法令違反がないかを確認するとして調査を進めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ウィングテックとネクスペリアの協議を支援

ビジネス

英、国民保健サービスの医薬品支出20億ドル増額へ 

ビジネス

補正予算案が衆院通過、16日にも成立見通し 国民・

ワールド

アングル:日銀会合後の円相場、金利反応が焦点に 相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中