最新記事

鉄道

安倍政権が推進した「オールジャパン鉄道輸出」の悲惨な実態 円借款事業でも車両は海外メーカー製導入

2020年9月28日(月)17時00分
高木 聡(アジアン鉄道ライター) *東洋経済オンラインからの転載

ミャンマー向け車両受注では、すでにJR東日本・JR北海道向けに、類似した仕様の電気式気動車を量産している川崎重工が大本命と関係者の誰しもが予想していた。しかし同社は応札しなかった。

ほかに電気式気動車を製造する可能性があるメーカーとしては日本車輛製造、日立製作所なども挙げられるが、前者はアメリカ、そしてインドネシア案件で大幅な損失を出しており、当分海外案件には手を出さないだろうというのがもっぱらの噂である。車両輸出に積極的な後者は、タイのバンコクレッドライン、ベトナムのホーチミンメトロと円借款案件を抱えており手いっぱいだ。

その結果、海外案件から最も遠いと思われていた新潟トランシスが受注したわけであるが、フェーズIIには繋がらなかった。

このような状況を反映してか、2018年には「円借款・本邦技術活用条件(STEP)の制度改善」が実施されており、入札不調の場合などの「原産地ルール」がやや緩和されている。日本製品が使用されていれば、どこで組み立てられようが構わないのである。つまり、「オールジャパンの鉄道輸出」など、実態の伴わない幻影になってゆく可能性が高い。

日本への信頼失墜を招く恐れも?

reuters__20200925134832.jpg

アジア地域にも進出するCAF車両。直近では台湾、高雄LRTに架線レス低床電車を納入している。CAF車両のミャンマーでの活躍も祈りたいところであるが......(写真:西船junctionどっと混む)

そして2点目は、CAF製車両がミャンマーの環境に適さず、走行が困難になった場合、ミャンマー政府からの日本への信頼が失墜するという未来である。

これは最悪のシナリオだ。日本製機器が採用されても、その他の装置や仕様は完全にヨーロッパタイプの車両となる模様だ。ただでさえ車両メンテナンスに苦慮しているMRで2種類の新型車両が入ることになる。それだけではなく、すでに日本側は「鉄道車両維持管理・サービス向上プロジェクト」などを通じて、日本製の気動車車両の導入を前提とした教育を行っている。そこにヨーロッパタイプの車両が入ったとき、MRが対応できるかどうかは未知数である。

また、安く車両を売ってメンテナンスで稼ぐ(消耗品も含め純正品以外使えない)というヨーロッパ式のシステムに資金力のないMRが対応できないことが予想される。故障したら最後、スペアパーツが購入できず、車両は車庫で朽ち果てることにもなりかねない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

デンマークとグリーンランドの首相、独仏首脳と会談へ

ワールド

カナダ、インドへのエネルギー輸出拡大検討 対米依存

ワールド

対米投融資、人工ダイヤ生産事業が有力に 「第1号」

ビジネス

欧州銀行連盟、EUに規制改革要求 競争力低下を警告
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中