最新記事

鉄道

安倍政権が推進した「オールジャパン鉄道輸出」の悲惨な実態 円借款事業でも車両は海外メーカー製導入

2020年9月28日(月)17時00分
高木 聡(アジアン鉄道ライター) *東洋経済オンラインからの転載

reuters__20200925134218.jpg

ミャンマー輸出へ向け陸送される車両(写真:西船junctionどっと混む)

車両については、今後の246両も新潟トランシスが同一設計の車両(環状線向けは通勤仕様)を導入するだろうというのが一般的な見方だった。ただでさえ製造コストのかさむ電気式気動車であり、同社にとっては初の製造である。量産に移行してようやくペイできるかどうかといったところだろう。それでも、続いての入札には参加しなかったのだ。

筆者の個人的感覚で大変恐縮であるが、この新型車両が公の場に現れたとき、「これはないな......」というのが第一印象であった。良く言えばノスタルジックな車両、悪く言えば時代遅れなのである。

もちろん、日本の最新技術が搭載されていることは百も承知である。筆者がいうのはそのデザインである。そこからは、予算を限界まで削ったのであろうことが伝わってくる。新生MRのフラッグシップとなる車両である。これが発注者たるMRが要望した姿なのだろうかと。この時に悪い予感はあった。だから、案の定なのである。

国内メーカーの製造能力に課題

それからもう一つ、JICAが公開している「ミャンマー国 ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズII 準備調査 ファイナルレポート」には車両の調達計画について気になる記述がある。


「現地組立を行わないことが決まったのち、特急列車用車両の調達についての検討が行われ、最終的に 180 両を調達することが決まった。複数の日本の車両製造業者に本プロジェクト期間中の製造能力を確認した結果、第一編成の引き渡しが着手から 36 か月、第二編成以降の引渡しは 1ヶ月/編成(6 両)の間隔が必要と判明したことから、平成 25 年(※)5月までに調達が可能と判断し MR に提案した。しかしながら、最終段階にて MR 側は 2024 年 12 月までにすべての調達が終了するよう強く要請し、結果として、日本側は調達のスケジュールの前倒しをすることでその要請を受け入れることとしたが、詳細設計において、メーカーの製造能力とスケジュールに関する詳細な調査が必要である」(原文ママ)
(※平成25年は2025年の誤記であると思われる)

なお、このレポートには同時に、前提条件として、「フェーズⅠの車両と共通して運用するために同じ仕様とすることが求められる」とも書かれていることを付け加えておく。

前述のミャンマータイムズの報道には、フェーズⅠ向けの新潟トランシス製車両の今後の到着予定も記されており、それによれば今年12月、そして2021年2月、4月の計3回に分けて残りの18両が現地に搬入されるという。これが正しければ、新潟トランシスでは現状、生産可能なのは2カ月に1編成(6両)ということになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、米国との交渉を否定 国連大使「唯一の言語は

ワールド

トランプ氏、米軍は「永遠に」戦争可能 大勝利に万全

ワールド

トランプ氏、イランは協議望むも「すでに手遅れ」 指

ワールド

中東紛争4日目、攻撃広がり犠牲増加 想定以上に作戦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び率を記録した「勝因」と「今後の課題」
  • 4
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 5
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 6
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 7
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「日本食ブーム」は止まらない...抹茶、日本酒に「あ…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中