最新記事

危ないIoT

IoT機器メーカーは消費者のセキュリティーを軽視している

GUESS WHO'S LISTENING?

2019年11月6日(水)11時05分
アダム・ピョーレ

magSR191106iotrisks-2.jpg

NEIL GODWIN-FUTURE PUBLISHING/GETTY IMAGES

テキサス大学ダラス校のアルバロ・カーデナス准教授は昨年、学生たちにさまざまなIoT機器への侵入を試みさせた。学生たちは、例えばインターネットと接続したカメラを動かして他人の家の中をのぞき見できることを実証した。

学生たちは、ドローンを乗っ取ることにも成功した。悪意ある人物がドローンを乗っ取れば、罪のない市民が体当たり攻撃されたり、家の中の様子が盗撮・盗聴されて生中継されたりする恐れがある。

よく売れているおもちゃのハッキングにも成功した。言葉を話す小さな恐竜のおもちゃだ(更新情報を受け取るためにインターネットと接続している)。これがハッキングによって乗っ取られれば、恐竜の声で不適切なことを述べたり、子供たちに何かを指図したりしかねない。

「極めてプライバシーに関わる」機器もハッキングされやすい状態にあった。その機器とは、インターネットにつながったバイブレーターだ。これは、国外の米軍要員が遠くのパートナーとバーチャルな性的関係を持つために用いる場合もある。バイブレーターの使用状況に関する情報が盗まれやすいだけではない。パートナーに成り済ました人物が「遠隔的な性的暴行」を行う恐れもある。

現在、世界に存在するIoT機器は約266億台。その数は、2025年までに750億台を突破すると予想されている。現状ではこの種の機器をWi-Fiに接続していないユーザーも多い。そのようなオフラインの状態にある機器はハッカーの手に届かないが、IoTの利便性をメーカーが宣伝すれば、この状況は変わっていくかもしれない。

インターネットにつながる機器が増えれば、ハッカーはますます活動しやすくなる。2016年に起きた大規模なネットワーク攻撃は、脅威がいかに増大しているかを浮き彫りにした。この事件は、2009年のツォイの調査結果に触発された可能性がある。

「Mirai事件」の衝撃度

内向的な大学中退者のパラス・ジャーは、コンピューターゲーム『マインクラフト』の愛好家向けに、自分のサーバースペースを貸すビジネスで大きな利益を上げていた。

しかし、この商売は競争が熾烈を極める。業界では、無警戒な人のコンピューターにマルウエア(有害な不正ソフトウエア)を送り込んで乗っ取り、ライバルのコンピューターに大量のメッセージやデータを送り付ける行為が横行していた。コンピューターをダウンさせるのが狙いだ。いわゆる「分散型サービス妨害(DDoS)攻撃」である。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙

ビジネス

中国の乗用車販売、11月は前年比-8.5% 10カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中