最新記事

中国発グローバルアプリ TikTokの衝撃

TikTokのブレイクは「芸能人がきっかけではない」バイトダンス井藤理人氏を直撃

2018年12月20日(木)17時25分
高口康太(ジャーナリスト)

――TikTok以前にもVINEやSNOWなど同様のアプリは存在した。違いは何か。

VINEは少し早すぎたのではないか。2012年リリースのアプリだが、まだスマホが今ほど普及しておらず、出来ることが限られていた。今のスマホは動画の撮影、加工、音楽を付ける、編集する――これらが非常にスムーズに楽に出来るようになっている。

SNOWとの違いは、我々がショートムービーのプラットフォームという点だ。さらにどんな動画にいいねをしているのか、コメントしているのかをAI(人工知能)が把握し、ユーザーの好みを学習。ユーザーが気に入る動画だけをリコメンドしていく。

TikTokと既存のSNSの違いは、自分好みのものしか出てこないシステムになっている点だ。「君の朝ご飯の写真なんか見たくない」「空の写真はもう結構」などなど、不要なコンテンツが目につくのがSNSではありがちだが、TikTokでは使い込めばそうした気に入らない動画は表示されづらくなっていく。

――バイトダンスは日本でここまでヒットすると予測していたのか

そこまで長期の予測をしてはいない。中国IT企業はより短期のサイクルで動くからだ。バイトダンス社員の目標設定は2カ月ごとだ。一般的な企業なら、期の初めに目標を立てて半年経ったら中間レビューをして、さらに半年後に最終的な成果を査定されるわけだが、バイトダンスではそれを2カ月ごとにやっている。

デジタルのトレンドも技術の進歩もスピードが非常に速い。逆に言うと、1年とか半年とか、あまり長期のプランは出せないことになる。だから2カ月で切る。この2カ月でこうなった、じゃあ次の2カ月はこうしようというプランニングだ。

――では日本での積極的な広告出稿は足元の状況を見ての判断か。

前提として、バイトダンスにとって、日本はアメリカと並ぶ重要なマーケットであることを理解していただきたい。そのため日本進出を決めた時点で、投資についても重要性に見合った予算を確保するという決断はあったのではないか。

TikTokのハッシュタグチャレンジのアイデアなど、日本のカルチャーを取り入れたものが非常に多いことも、日本市場を重要視していることのあらわれだ。

日本法人の拡充もその一環だ。9月に入居した現在のオフィスも、(中国・北京の)本社を除けば、他国と比べて規模が大きい。300人を収容可能だ。今は100人ちょっとだが、今後もどんどん人を増やし、投資していく。

――TikTokを使うインフルエンサーが増えているが、再生回数に応じて利益を配分するアフィリエイトプログラムなどは導入されないのか。中国版「抖音(ドウイン)」では投げ銭として使えるバーチャルギフトの準備が進んでいるとも聞くが。

日本では検討していない。ある意味公平に、UGC(User Generated Contents:ユーザー制作コンテンツ)のプラットフォームとして、自由に、面白い形で、情報や動画、音楽をシェアしてもらいたいというのが目的だ。利益配分のシステムは考えていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

世界の大富豪の財産相続、過去最高に=UBS

ワールド

米政権、燃費規制緩和でステーションワゴン復活の可能

ビジネス

中国BYD、南アでの事業展開加速 来年販売店最大7

ワールド

インド中銀、0.25%利下げ 流動性の供給拡大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 10
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中