日常的に数字と縁遠い立場からすれば、それを意識することはあまりないかもしれない。だが、古代から現代に至るまでの会計のあり方を時系列的に追った本書を読み進めると、その重要性、特に会計と権力との関係性がわかってくる。そしてポイントは、これが会計や帳簿をモチーフとした「歴史書」だということ。いわば会計や帳簿をスパイスと位置づけながら、歴史というストーリーを楽しめるわけだ。
しかし、だからこそ、世界経済が「ストーリーを楽しめる」などと呑気なことをいえる状況にないことがはっきりわかるのもまた事実。古代の話題は自分の生活に関係のない昔話のように思えもするが、決してそうではなく、つまり歴史が"線"としてつながっていることが、特に第13章「大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか」を読むとよくわかる。その挙句に終章で「経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている」などといわれると絶望的な気分にもなるが、だからこそ、「会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する」という事実から学ぶべきことがあると、著者は締めている。
会計が日常生活から切り離された結果、人々の関心は薄れ、多くを期待しなくなってしまった。(中略)いつか必ず来る精算の日を恐れずに迎えるためには、こうした文化的な高い意識と意志こそを取り戻すべきである。(336ページより)
それを「原点回帰」ということばに置き換えるのは安直かもしれない。が、忘れかけていたことを思い出す必要がある時期に私たちがいることは事実だ。そして本書は、そのためのきっかけを与えてくれるだろう。
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