──ボルドーの生産者にとって中国人は大事な顧客だ。その一方で「成り上がりの中国人」とか「洗練された文化を理解しない人々」というような軽蔑もあるのでは?
間違いなく、差別的な感情はあると思う。でもそれは、2つの文化が付き合っていこうとするときにはしばしば起こる問題だろう。
実際、多くの人が「中国人はワインについて無知だ」「何を飲んでいるのかさえ分かっていない」「彼らにはボトルの中身なんてどうでもいいんだ。大事なのはラベルに何て書いてあるかだ」と私に言ってきた。それでも、いま最も大切なお客はアメリカ人でもドイツ人でもイギリス人でもなく、お金のある中国人なんだ。
中国人がワインに関して知識がないのは、たぶん事実だろう。でもそれも劇的に変わりつつある。彼らはすごい勢いで知識を吸収している。ボルドーの人たちはそのことを分かっていないと思う。
──中国のワインは飲んだ?
うーん、飲んだけど、ほとんどはひどい味だった。でも、とてもいいワインをつくる生産者もいくつかある。そのうちの一つが、映画にも登場した「賀蘭晴雪」。国際的なコンペティションの赤ボルドー部門で最高賞を獲得した。目隠しでテイスティングをした審査員たちがフランスのワインでなくこの中国のワインを選んだが、それが分かったときにはみんなショックを受けていた。
一部のフランス人は、「中国産ワインのはずがない。フランスのワインに違いない。彼らはボルドーからワインを持っていって空いたボトルに入れ、中国のラベルを付けてコンペティションに持ってきたんだろう」と言っていた。嫉妬だろうね。
──ボルドーは400年の歴史の中で、最大の岐路に立っているというが。
中国のボルドーワイン市場は右肩上がりに伸びていたが、偽造品の横行で11年には価格の暴落が起きた。映画が完成した後、さらに打撃を与える出来事が起きた。昨年、中国政府のトップが胡錦濤(フー・チンタオ)から習近平(シー・チンピン)に交代したことだ。習政権は腐敗撲滅を掲げ、役人の無駄使いやぜいたくを戒めた。高級品や高級ワインの消費が落ち込み、ボルドーワインも打撃を受けた。今は生産者らも状況を見守っているところだろう。
個人的には、市場はまた盛り返すと思う。今の中国で日常的にワインを飲んでいるのは2000万人。それが2020年には8000万人になると予想されている。6年間で4倍だ。そうなれば状況も再び変わるだろう。
──最後の場面は、あなた自身がワインづくりの中でいつも感じていることだろうか?
以前も感じていたが、この映画を通してもっと強く感じるようになった。すべては運命だってね。