──サリーはカラフルなドレス、フランクはかつらと、小道具が重要な役割をしている。ロバート、『トロピック・サンダー』で顔を黒くすることに抵抗はなかった?(ダウニーは黒人軍曹を演じるために皮膚移植をする白人の俳優を演じている)
ダウニー ベン・スティラーが「コメディーの企画がある。(黒人男性が白人女性に扮する)『ホワイト・チックス』の逆バージョンみたいなやつだ」と言ってきて。このバカがと思ったね。でもしだいに興味がわいてきた。(映画監督の)父は68年に広告会社を乗っ取る黒人の映画を撮っている。全編に自分で音声を入れたもんだから、黒人俳優の声も吹き替えた。そんな過去が息子にめぐりめぐってきたように感じた。だからやろうと決めたんだ。不安があるものには思い切り立ち向かえってことさ。やりすぎくらいにあの役を演じて、観客を不快にさせたり、ヘンな言葉を口走ったりしてもいいと思った。
──あのキャラクターがおかしいのは、演じている役にのめり込んでいるところだ。あなた自身はどうだった?
ダウニー あの映画の笑いはそこにある。もちろんさっきのニクソンの話のように、役に没頭することで作品がリアルになることもあるけどね。俺はたいていは気にしない。どうすれば音声担当を笑わせられるかばかり考えていたよ。にこりともしないんだぜ。
ホーキンス あなたが楽しんで演じているのはわかったわ。
──ミッキーは『レスラー』では演技をしていないように見えたが。
ローク 大変だったさ。当初、製作資金が集まらなくて役を降板することになったときはホッとしたくらいだ。監督について言わせてもらうと、尊敬できて信頼できる奴でないと俺は無理。口はうまくても、いざ始まるととんでもない人間が多い。ダーレン(・アロノフスキー監督)は用意周到だった。頭がいい。俺を挑発して演技を引き出すコツを知っていた。
ピット 撮影はぶっつけ本番? むちゃくちゃなスケジュールだったようだけど。
ローク ひどいもんだ。7カ月かけて体重を増やして、4カ月はレスリングの練習だ。その間のカネは払えないと監督は言う。しかも自分の命令に従え、スタッフの前では自分をバカにするなってんだ。度胸があるよ。低予算だからレスリングシーンは本物の会場にカメラを持ち込んで撮影した。こっちはちゃんとアクションを覚えておかないとならない。本物の試合の合間に3テイクぐらい撮るのがやっとだ。3000人の熱狂的なプロレスファンの前でやるんだから、プレッシャーだったよ。
──あざだらけ?
ローク ああ。だから一時降板になったときはうれしかった。思えば役に全力を傾けたのは10年ぶりだ。終わってみりゃいい気分さ。あんな気分は忘れてたよ。80年代の人気レスラーがプレミア上映に来てくれた。リック・フレアやブルータス・ビーフケーキなんかがね。彼らが映画を認めてくれるかどうかビビッたよ。だけどロディ・パイパーが涙を流したのを見て、やったと思った。
ハサウェイ 子供のときにその人のアクションフィギュアをもっていたわ。
ローク クールな男だ。
ダウニー 俳優と熱く議論したり、いがみ合えるのが優れた監督だよ。ひがんだり、恨んだりしない関係だ。(ダウニーが主演した『シャーロック・ホームズ』の監督)ガイ・リッチーは、「お前はサイテーだ。みんなそう思ってる」なんて言うんだ。こっちは「そうかい。この薄らバカが」と答える。で、口ゲンカが始まる。現場にいた女房も険悪な雰囲気だったと言ってた。でも翌日はケロッとして互いに現場に行く。俺が少しひねくれた人間ということかな。監督とは密な関係を結びたいんだ。
ホーキンス (『ハッピー・ゴー・ラッキー』の監督の)マイクとは親しくなれると思うわ。長い即興劇をやらせるんだから! それで本人は車の後部座席で寝てしまうの。あるいは消えちゃう。
ダウニー 車から演出するの?
ホーキンス 違う。自動車の運転免許の路上教習という設定でロンドンの街を走ったときのことよ。それを何日かやって、マイクは後部座席で横になっていたわ。
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