──(『レイチェル』の監督)ジョナサン・デミは、自分の「異常なところ」を見抜いた初めての監督だと言っていたよね。なぜ彼の見方を信頼できたの?
ハサウェイ ジョナサンみたいに優しい人には出会ったことがなかった。どうせ見抜かれちゃうんだから、隠してもしょうがないと思ったの。彼は私を受け入れてくれた。セラピストみたいだった。
ピット 僕は監督と同志愛的なつながりを求める。
ハサウェイ それもあったわ。
ランジェラ 私は君たちの誰よりも長くこの業界にいる。スポットライトを浴びるとはどういうことかを知っているのが俳優だ。「アクション!」の声とともに、突然カメラの前で裸にされるあの感覚を知っているのは俳優だけだ。監督は、俳優がどれほど無防備か理解しなければならない。彼らのひとことで、心が砕けることもある。私はこの監督を信頼できると思ったら、すべてをささげる。信頼できないときは、私の中の声がささやくんだ。「傷つけないでくれ。私を助けてくれないなら、せめて傷つけないでくれ」と。
──サリー、『ハッピー・ゴー・ラッキー』の撮影準備が始まったとき、自分が主役だと知らなかったって本当?
ホーキンス たぶん大きな役になるのはわかっていた。でも、あそこまで大きいとはね。
ダウニー やたらと前向きな女性を演じ続けたから、精神的におかしくなったって聞いたけど?
ホーキンス ええ。でも、彼女は裏にいろいろなものをかかえている。暗い面も意識して表現しようとした。マイク(・リー監督)は、思いやりのある妖精っぽい女性にしたがっていた。
──撮影中にキャラクターになりきる人もいる。フランクは周囲に「大統領閣下」と呼ばせたとか。
ハサウェイ 面白いわ。
ランジェラ そんなことをしたのは初めてだ。少しでも素の自分に戻ると、大統領(ニクソン)周辺の人々を演じる俳優の緊張感がなくなってしまう。32日間続けた。孤独だったが、正しかったと思う。
──今も大統領と呼ばせている?
ランジェラ ベッドでだけだよ。
ブラッド、君は『ベンジャミン・バトン』で生後半年の赤ん坊を演じたときは役に入り込んだ?
ピット あれは僕じゃないってば。
──ブラッド、外見は高齢だけど内面は若いバトンを老人として演じた? それとも老人の体をもつ若者として?
ピット 老いた体の若者として。それにしてもフランクは俳優として離れ業をやったね。さんざんネタにされてきた人物を演じたのだから。観客にそうしたイメージを思い出させずに一人の人間として演じている。まったく見事で、どうしたらあんなことができるのか不思議だよ。
ランジェラ アメリカとイギリスの俳優の違いがよく語られるが、イギリス人は外側から、私たちアメリカ人は内側から役に入る。
ピット 僕だったら割礼のあるなしだとか言っちゃったかも。
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