最新記事
結婚

日本の若者はなぜ結婚をしなくなったのか? 「不本意未婚」が4割以上...変化したのは価値観ではなく「環境構造」

2024年7月23日(火)17時56分
荒川 和久(独身研究家、コラムニスト)*東洋経済オンラインからの転載

【中間層が結婚できなくなった理由】

なぜ中間層が結婚できなくなっているのか、といえば、この30年間若者の所得はまったくあがらなかったうえに、税金や社会保険料などの国民負担率は毎年ジジワジワとあがり続け、かえって若者の手取りは減ってしまっています。加えて、昨今の物価高によるダブルパンチで、結婚どころか日々の生活でせいいっぱいという若者も多いでしょう。

そんな中で、政府は「子育て支援金」の徴収などという暴挙に出て、さらにこれから結婚・出産するはずの若者の負担率をあげようとしています。これでは、拙著のタイトルではありませんが、まさしく「結婚滅亡」の道へ突き進むことになるでしょう。

SMBCコンシューマーファイナンス株式会社が定期的に実施している「20代の金銭感覚についての意識調査」では、「結婚しようと思える世帯年収」はいくらか?ということを聞いています。「結婚しようと思える世帯年収」とは、若者が「結婚に最低限必要な年収」はいくらかという意識がわかると思います。

2014年調査時点では、その中央値を計算すると379万円でしたが、その後の10年間でどんどん上昇し、最新の2024年調査では544万円にまであがっています。実に2014年対比で約1.4倍です。一方で、国税庁の民間給与実態調査から、25~29歳男性の平均年収(個人年収)は、2014年は381万円に対し、最新の2022年段階でも420万円と約1.1倍の上昇にとどまっています。つまり、結婚必要年収の上昇に、実態としての若者の給料が追い付いていないわけです。

そして、注目すべきは、2014年時点では、結婚に必要な年収379万円と25~29歳男性の平均年収381万円はほぼ一緒だったことです。10年前まで結婚に必要な世帯年収意識と実際の男性の個人年収の乖離はなかったのです。これは、2014年までは夫の一馬力でも「結婚必要年収」をクリアしていたことを意味します。

ところが、今では、妻も稼いでくれないと結婚に必要な年収に達しません。「夫婦共稼ぎ」をすればいいではないかと言いますが、実際は、2020年の国勢調査でも末子が0歳の世帯の場合、妻の6割が無業になります。望むと望まないとにかかわらず、どうしても夫の一馬力にならざるをえない時期が多くの夫婦にあります。

【若者が結婚をあきらめてしまう環境構造】

そうしたことをふえると、未婚の若者が「結婚なんて、出産なんて無理だ」とあきらめてしまうのも仕方ないことかもしれません。それは、決して若者の価値観が変わったのではなく、環境構造があきらめざるをえない心を作っているのです。

「お金がすべて」とは言いませんが、どんなにきれいごとを並べたところで、結婚とは経済生活であり、お金がなければ運営できません。以前は簡単に買えていたものが、とてつもなく値段があがって買えないものになってしまった。若者には「結婚と出産のインフレ」が起きているのです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中