最新記事
結婚

日本の若者はなぜ結婚をしなくなったのか? 「不本意未婚」が4割以上...変化したのは価値観ではなく「環境構造」

2024年7月23日(火)17時56分
荒川 和久(独身研究家、コラムニスト)*東洋経済オンラインからの転載
日本の若者はなぜ結婚をしなくなったのか? 背景にある価値観の変化ではない「あきらめの環境構造」

metamorworks -shutterstock-

<若者の「恋愛離れ・結婚離れ」が話題だが、婚姻数と出生数の減少を若者の自己責任に帰するのはまったくの誤りだ。その背景を90年代と現在の調査データの比較から明らかにしよう>

メディアは、よく「若者の恋愛離れ・結婚離れ」などと言います。昨今の婚姻数の減少および婚姻数の減少に伴う出生数の減少は、まるで若者の価値観が変遷したことが原因かのように言う有識者もいます。まるで、こうなったのは「若者の自己責任」であったかのように。しかし、それらはまったくの見当はずれの解釈です。

確かに、出生動向基本調査が経年で調査している若者の「一生結婚しない」という割合は年々増えています。同調査の報告書では、18~34歳を集計したものとなっていますが、それを20~39歳で再集計しても同様です。20~39歳としたのは、未婚男女の「恋愛結婚による結婚限界年齢」は男性40.0歳、女性37.6歳であることから、対象年齢を39歳まで拡大するためです。

【「若者の結婚離れ」は本当なのか?】

具体的に見ると、「一生結婚しない」割合は、男性は1992年の5%から2021年では20%へと4倍になりました。女性も、1992年の6%から2021年は17%へと3倍に増えています。結婚が可能な年齢帯において男女とも「一生結婚しない」という選択的非婚が増えているのですから、「これは若者の結婚離れ」と言ってよいだろうという理屈なのですが、果たしてそうでしょうか?

同調査では、「一年以内に結婚したい」と「まだ結婚したくない」という結婚意思の違いでも分けて集計していますが、前者を「結婚前向き派」、後者を「結婚後ろ向き派」とし、前述した「一生結婚しない」もあわせた「20~30代の結婚意識の長期推移」をグラフ化したものが以下になります。

日本の若者が結婚しなくなった「本当の理由」データ1

日本の若者が結婚しなくなった「本当の理由」データ2

【結婚前向き派の割合は減っていない】

これで見るとよくわかりますが、1992年から2021年にかけて、確かに「一生結婚しない」という選択的非婚割合は増えているのですが、かといって、「結婚したい」という結婚前向き派の割合が減っているわけではありません。

結婚前向き派の割合は、男性では、1992年43%から2021年44%まで、30年間41~45%の間でほぼ一定です。同じく女性も、1992年50%から2021年49%まで49~54%の間で推移しています。

1992年とはまだ世の中では皆婚の名残りがあった頃で、むしろ恋愛至上主義とすら言われていた頃です。その時代から現代にいたるまで、20~30代の男性の4割、女性の5割は、「結婚に前向き」な層として存在していたわけで、若者の結婚意欲が失われたからでも、価値観が変化したからでもありません。

見方を変えれば、皆婚時代でさえ結婚に前向きだったのは4~5割でしかなく、本人の明確な意思があろうとなかろうとその時代は「結婚できた」のです。むしろ結婚することはそれほど難易度の高いものではなかったと言えます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米軍、重要鉱物の国内精製施設開発へ 中国依存からの

ビジネス

フォード、ルノーの技術と工場活用へ 欧州向け低価格

ワールド

ロシア軍、ウクライナの全戦線で前進=参謀総長

ビジネス

日経平均は小幅続伸、半導体関連小じっかり 積極売買
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中