ステージ4のがんが劇的寛解 ストレスや怖れから解放されると治癒能力が高まる
劇的寛解者が治癒の過程で直面する二つの怖れ
ランキン博士は、ほかの多くの療法士や劇的寛解者たちと同様に、人生の試練を学びの機会と捉える意欲があれば、怖れを手放し、さらなる好奇心と自己理解に向かって進むことができると示唆しています。劇的寛解を果たした人たちが、治癒の過程で直面する二つの具体的な怖れは、検査や診察のたびに感じる「結果を聞くまでの不安」と「死への恐怖」です。
どちらの怖れも現実のものであり、もっともなものです。しかし、それらによって立ちすくむ必要はありません。むしろ、そうした怖れを受け入れ、その支配をゆるめる方法を見つければいいのです。ランキン博士の怖れに対する「処方箋」の一つは、瞑想(めいそう)です。
瞑想などによって怖れの声から距離を置くことができれば、とても静かで平安な場所を見つけることができます。この絶対的な静寂の場にアクセスするには今この瞬間にいる必要があり、この静寂な場所には怖れは存在しません。この意識状態にあるときは、自分の死さえ怖くありません。
怖れは私たちの免疫システムを抑制するかもしれませんが、瞑想などの実践によってそれを分散させることができます。私たちは怖れの犠牲者になる必要はなく、あらゆる治癒のプロセスの自然な一部として怖れを受け入れ、うまく対処することができるのです。
マインドフルネスストレス低減法(MBSR)は、抑圧された感情を解放するための効果的な戦略です。私は、MBSRが健康を改善する無数の方法を理解するという点で、研究が進歩し続けていることを報告できるのをうれしく思います。
たとえば、乳がん患者を対象とした最近の研究では、6週間のMBSRコースを受講すると、テロメアの長さと活動が大幅に増加することがわかりました。テロメアは、靴ひもの端にある小さなプラスチックのキャップがほつれないようにするのと同じように、DNAの末端を保護するものです。
年齢を重ねると、細胞内のDNAがコピーされて新しい細胞がつくられるたびに、テロメアは自然に短くなっていきます。テロメアが短くなればなるほど細胞は「古く」なり、その結果、老いを感じ、病気のリスクも高くなるのです。この研究に参加した乳がん患者は、MBSRのよく知られた心理的効果(抑うつ、不安、がん再発への怖れの軽減など)を享受しただけでなく、テロメアの長さと活動の増加によって細胞の健康状態も改善されました(※1)。
トラウマは慢性疾患のリスクを高める
科学者たちは、怖れが免疫システムに与える影響を理解するだけでなく、大人になってからの身体的健康への影響を含めて、幼少期の有害な経験の長期的な影響についても理解しはじめています(※2)。
幼少期にストレスの多い経験をすると、ストレスに対する初期の反応が高まり、これまで述べてきたように、免疫機能を抑制するため、その後の人生で慢性疾患にかかるリスクが高くなります(※3)。
近年の#MeToo運動のおかげで、私たちは、過去のトラウマや暴行に起因する抑圧された感情の影響の深刻さを認識する、極めて重要な時期にいます。
性的暴行を受けた人の50%が生涯に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を経験します(※4)。女性の5人に1人が一生のうちに一度はレイプされる(※5)という事実を考えると、多くのがん患者にとって性的虐待が抑圧された感情の根源にあるというのは理にかなっています。
このようなトラウマを経験したがん患者に#MeToo運動が与え続けている影響は、こうしたトラウマにまつわる長年の感情を声に出して解放することの重要性を、社会がようやく認識したことです。それによって、患者が自分の感情を処理するために必要な支援を受けられるようになりました。
EMDR(眼球運動による脱感作・再処理)は、過去のトラウマを解放するのに非常に役立つことが示されている新しい治療法です。