最新記事
ヘルス

ステージ4のがんが劇的寛解 ストレスや怖れから解放されると治癒能力が高まる

2023年12月4日(月)19時42分
ケリー・ターナー(がん研究者) *PRESIDENT Onlineからの転載

劇的寛解者が治癒の過程で直面する二つの怖れ

ランキン博士は、ほかの多くの療法士や劇的寛解者たちと同様に、人生の試練を学びの機会と捉える意欲があれば、怖れを手放し、さらなる好奇心と自己理解に向かって進むことができると示唆しています。劇的寛解を果たした人たちが、治癒の過程で直面する二つの具体的な怖れは、検査や診察のたびに感じる「結果を聞くまでの不安」と「死への恐怖」です。

どちらの怖れも現実のものであり、もっともなものです。しかし、それらによって立ちすくむ必要はありません。むしろ、そうした怖れを受け入れ、その支配をゆるめる方法を見つければいいのです。ランキン博士の怖れに対する「処方箋」の一つは、瞑想(めいそう)です。

瞑想などによって怖れの声から距離を置くことができれば、とても静かで平安な場所を見つけることができます。この絶対的な静寂の場にアクセスするには今この瞬間にいる必要があり、この静寂な場所には怖れは存在しません。この意識状態にあるときは、自分の死さえ怖くありません。

怖れは私たちの免疫システムを抑制するかもしれませんが、瞑想などの実践によってそれを分散させることができます。私たちは怖れの犠牲者になる必要はなく、あらゆる治癒のプロセスの自然な一部として怖れを受け入れ、うまく対処することができるのです。

マインドフルネスストレス低減法(MBSR)は、抑圧された感情を解放するための効果的な戦略です。私は、MBSRが健康を改善する無数の方法を理解するという点で、研究が進歩し続けていることを報告できるのをうれしく思います。

たとえば、乳がん患者を対象とした最近の研究では、6週間のMBSRコースを受講すると、テロメアの長さと活動が大幅に増加することがわかりました。テロメアは、靴ひもの端にある小さなプラスチックのキャップがほつれないようにするのと同じように、DNAの末端を保護するものです。

年齢を重ねると、細胞内のDNAがコピーされて新しい細胞がつくられるたびに、テロメアは自然に短くなっていきます。テロメアが短くなればなるほど細胞は「古く」なり、その結果、老いを感じ、病気のリスクも高くなるのです。この研究に参加した乳がん患者は、MBSRのよく知られた心理的効果(抑うつ、不安、がん再発への怖れの軽減など)を享受しただけでなく、テロメアの長さと活動の増加によって細胞の健康状態も改善されました(※1)。

トラウマは慢性疾患のリスクを高める

科学者たちは、怖れが免疫システムに与える影響を理解するだけでなく、大人になってからの身体的健康への影響を含めて、幼少期の有害な経験の長期的な影響についても理解しはじめています(※2)。

幼少期にストレスの多い経験をすると、ストレスに対する初期の反応が高まり、これまで述べてきたように、免疫機能を抑制するため、その後の人生で慢性疾患にかかるリスクが高くなります(※3)。

近年の#MeToo運動のおかげで、私たちは、過去のトラウマや暴行に起因する抑圧された感情の影響の深刻さを認識する、極めて重要な時期にいます。

性的暴行を受けた人の50%が生涯に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を経験します(※4)。女性の5人に1人が一生のうちに一度はレイプされる(※5)という事実を考えると、多くのがん患者にとって性的虐待が抑圧された感情の根源にあるというのは理にかなっています。

このようなトラウマを経験したがん患者に#MeToo運動が与え続けている影響は、こうしたトラウマにまつわる長年の感情を声に出して解放することの重要性を、社会がようやく認識したことです。それによって、患者が自分の感情を処理するために必要な支援を受けられるようになりました。

EMDR(眼球運動による脱感作・再処理)は、過去のトラウマを解放するのに非常に役立つことが示されている新しい治療法です。

メンバーシップ無料
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米自動車関連団体、政権に中国メーカー参入阻止を要請

ワールド

イスラエル外相、迎撃ミサイル不足を否定

ワールド

NATO、イラン問題で支援しなければ「悪い未来」と

ワールド

イスラエル首相、イランで死亡説拡散 動画公開し否定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングアップは「2セット」でいいのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 6
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 7
    ぜんぜん身体を隠せてない! 米セレブ、「細いロープ…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中