最新記事
ヘルス

レカネマブのお世話になる前に──アルツハイマー病を防ぐため脳の老廃物を洗い流す科学的な方法とは

2023年11月18日(土)11時26分
中尾篤典(医師)・毛内 拡(脳神経科学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

アルツハイマー病のイメージ

*写真はイメージです pathdoc - shutter stock

脳の細胞と細胞の隙間にたまった老廃物を洗い流す

その答えは、脳の自浄作用にあるといいます。脳の中では、脳脊髄液という液体が血液から作られ、1日に4~5回入れ替わるペースで頭蓋骨の下をゆっくりと循環しています。2012年に米国のロチェスター大学で行われた研究によると、どうやらこの脳脊髄液が脳組織の内部に浸透し、細胞と細胞の隙間にたまった老廃物を洗い流す仕組みがあるらしいことがわかりました②。

その後の研究では、この脳の洗浄が深い睡眠中に生じること③や体内時計と連動していること④などが次々と報告されています。

さらに、2016年米国のMITで行われた研究では、1秒間に40回点滅する光を見せることで、脳の老廃物の除去を促進し、アルツハイマー病モデルマウスにおいて認知機能の改善が見られることが示されました⑤。その後の研究では、光だけでなく、音の刺激やその組み合わせにも効果があることが報告されています。

脳は、神経細胞の電気的な活動によって情報をやり取りしていますが、その集団的な活動は、脳波として記録されます。この脳波の波の性質(振動数)を調べることで、寝ているか、リラックスしているか、集中しているかなどの体の状態がわかります。1秒間に40回という振動数は、ガンマ波と呼ばれる脳波で、動物が集中して何かを行ったりする認知機能に関わっているとされています。

一方、アルツハイマー病の患者では、このガンマ波が少なくなっている傾向があり、これが認知機能が低下することと関連があるのではないかと考えられているのです。

1秒間に40回の光や音刺激を行うことで、脳の電気活動がそれに「同調」を起こし、その結果、認知機能が改善したのではないかと考えられています。このような技術は、簡易に行えるため、人間への応用への期待が高まっています。しかし、2023年には、40回の光や音刺激を行ってもアルツハイマー病は改善しなかったという反証論文も出ており、脳科学の中で最もホットな話題となっています⑥。

資産運用
「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒れる今こそ投資家が目を向ける「世界通貨」とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏関係者、ロシア企業とアラスカガス開発で合

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月速報51.9に上昇 製造業

ビジネス

アングロ・アメリカン、昨年の赤字37億ドル デビア

ビジネス

英総合PMI、2月速報53.9に上昇 雇用は大幅減
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 6
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 7
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 8
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 9
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中