犬は人の表情を読んでいる──あなたが愛犬に愛されているかは「目」でわかる
FOR THE LOVE OF DOG
チャニの自宅には小さなオブジェがたくさん置いてあった。フリップは元気いっぱいで「興奮しやすい」性格だったが、それでも何かを倒したり壊したりすることは一度もなかった。ボールやおもちゃなどをテーブルから取ってくるよう命じると、フリップはいつも「細心の注意を払って」取ってきた。
その際、うっかり何かを動かしてしまった場合は「すぐに立ち止まり、助けを求めて私を見るか、吠えて合図をした」という。
フリップのこうした行動から、チャニとミクローシは「飼い犬の知能はオオカミより劣っている」とするミシガン大学の実験結果に疑問を抱くようになった。
もしかすると、犬にとっては人の行動を見て門の鍵を開けるのはたやすいことで、ただ「勝手に開けてはいけない」と思っているだけかもしれない。
チャニとミクローシは、複雑な仕掛けの実験を考案し、28頭の犬と飼い主に参加してもらった。この実験室で犬が肉を手に入れるためには、金網の向こう側にあるプラスチック皿の取っ手を引っ張る必要があった。
庭で大半の時間を過ごし、自立した行動に慣れていると思われる室外犬の場合、成功率は約3回に1回だった。一方、従順な室内犬は動かず、まず飼い主の許可を求めた。しかしOKが出ると、室外犬と同程度の成功率を示した。
犬の理解力を調べる実験では、いくつかの容器の1つに食べ物を隠した後、犬を部屋に連れてきて、どの容器に食べ物が入っているかを当てさせた。その際、飼い主は犬に対してさまざまな合図(正しい容器を見つめる、指差す、正しければうなずく、など)を送った。
人間の幼児で同様の実験を行うと、子供たちはすぐにヒントを読み取れる。だが猿やチンパンジーだと、訓練しない限りヒントを正しく理解できない。
一方、犬は幼児と同様にのみ込みが早く、人の指差しやうなずき、アイコンタクトなどをすぐに見分け、食べ物を手に入れた。