攻撃性や吠え癖、犬の問題行動は飼い主のQOLに影響大...良好な関係を築くには? 3つの研究結果
YOUR DOG’S HOLD ON YOU
犬との暮らしが幸せかどうかは、吠え癖などの望ましくない行動が生むストレスや飼い主本人の性格に左右される ELENA NICHIZHENOVA/SHUTTERSTOCK
<犬を飼うことには、人間の心身両面の健康に複数のメリットがある。だが犬との関係は複雑で、葛藤が生まれることもある>
私が犬に関する研究に関心を持ったのは、初めてのペットだったコッカー・スパニエルのパントロとの絆がきっかけだ。人懐こくて元気いっぱいのパントロは、私にとって最高の相手だった。長時間の散歩を一緒に楽しむ一方で、構う人がいなくても、落ち着いて自主性を発揮していた。とはいえ、困った行動に悩まされることも何度かあった。
犬と飼い主が結ぶ独特の絆について研究を始めたのは10年以上前だ。人と動物の関係を専門とする研究者として、犬のポジティブな行動と問題のある行動の双方に、飼い主がどう向き合うかをテーマにしてきた。
犬を飼うことには、人間の心身両面の健康に複数のメリットがある。だが犬との関係は複雑で、葛藤が生まれることもある。攻撃性や吠え癖といった望ましくない行動は、飼い犬を手放す大きな理由になっている。
ペットの行動に問題がある場合、しつけにより多くの時間がかかり、飼い主の悩みの種になりかねない。訓練がうまくいかないこともあるだろうし、犬を連れて行ける場所が限られ、ストレスが募るだろう。
飼い主が犬の困った行動に直面したとき、どうすれば両者の関係の悪化を防げるか──これは、さらなる研究が必要な問いだ。
博士号取得に向けた研究の一環として、私は同僚ら3人と共同で、2018年から今年にかけて3つの研究を実施した。目的は、人と犬の関係の質を高める要因だけでなく、犬との関係が緊張化した場合について理解を深めることだ。
1つ目の研究では、17~25歳の参加者401人に、自身の性格や飼い犬の性格、飼い犬に感じる愛着について尋ねる一連のアンケートに回答してもらった。帰属意識やストレスレベルなど、身体・精神・社会的健康に関する質問もした。性格的特徴や愛着が、本人の充実感に関連する度合いを評価するためだ。
その結果、犬を飼う若者の充実感を理解する上でカギになるのは、本人の性格面と飼い犬に対する愛着関連の因子だと判明した。一例を挙げれば、当然ながらと言うべきか、飼い犬の引っ込み思案で不安に満ちた行動は、飼い主の充実度の低下と関連していた。
犬との感情的なつながりが、飼い主の幸福感や健康に影響を与える可能性を浮かび上がらせた結果は、先行研究と一致する。犬との暮らしが必ずしも本人の充実感にいい効果をもたらすわけではない。前提になるのは、飼い犬とポジティブな感情に基づく関係を築くことだ。
つながりと「同時性」がカギ
研究結果は、本人の性格と充実感の関連も浮き彫りにしたが、飼い犬の性格と飼い主の充実感の関連は示していない。犬を飼う若者の心身両面の健康には、ペットではなく、本人の性格的特徴のほうが強く関連するようだ。
計131人が参加した2つ目の研究では、飼い主がペットの困った行動に抱く感情に焦点を当てた。
予想どおり、犬が示す望ましくない行動は、飼い主の生活の質(QOL)をめぐる満足度の低下の影響を受けていた。具体的には、飼い主のストレスや責任感、QOLへの不満感は、飼い犬が攻撃的になったり過剰に吠える状況と結び付いている。
3つ目の研究では、犬を飼う17~26歳の若者7人を対象に聞き取り調査を行った。飼い犬の問題行動に対する姿勢を探るため、ペットがやってはいけないことをしたときの受け止め方や感情、対処法を尋ねた。
答えはさまざまだったが、全般的に見て、彼らは困難でストレスの大きい状況に対応できていた。研究結果によれば、必要に応じて「褒めて教える」しつけや訓練士とのトレーニングを行うなど、積極的に対策を講じる手法が主流のようだ。
さらに、飼い犬との身体的・感情的つながりや「同時性」が重要だと、彼らは指摘した。同時性とは、人と犬の双方が行動を調整し、日常的交流の中で「波長が一致している」という感覚が生まれる状態のことだ。
例えば、飼い犬が家族のあるメンバーにじゃれつく一方で、より権威があると見なした相手には敬うような態度を見せると、参加者らは話した。こうした犬の能力は、同じ家の住人それぞれと前向きで調和の取れた関係を結ぶ上で極めて重要だろう。
これらの研究結果は、若い飼い主と飼い犬の関係の質を左右する要因の一部を明らかにし、ペットとの関係が本人の充実感に資する可能性を示唆している。同時に、犬の問題行動と飼い主のQOL、飼い犬が間違ったことをしたときの対処法が相関関係にあることも明確になった。
人間関係と同じく、犬との関係も良くなったり悪くなったりすることがある。決め手になるのは、飼い主の心理状態と飼い犬の行動、そして彼らを取り巻く環境だ。
Renata Roma, Researcher, Child & Youth Studies, Brock University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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