米中韓が熱視線...アフリカの音楽産業が「いい投資先」と言えるこれだけの理由
African Music Goes Global With Universal Deal
投資の地政学的な意味
アメリカと中国が世界で影響力を競っているこの時代、アフリカのクリエーティブ産業への投資はアメリカにとってこれまでに増して重要になっている。
中国はアフリカにおける投資先として、今後発展が望める産業、つまりインターネットを介したゲームやエンターテインメントの分野に注目している。具体的には光ファイバーケーブルの敷設や安価なスマートフォン販売をはじめ、配信サービスの立ち上げといったネットインフラへの投資を行っている。アフリカのインターネット網の約50〜70%は華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が手がけたものだ。
また、アフリカでスマホを最も多く売っているのは、中国の携帯電話メーカー、伝音控股(トランシオン)だ。同社が15年にナイジェリアで事業を開始したブームプレイは、アフリカで最も人気の音楽配信サービスとなっている。
一方で韓国企業もナイジェリア市場への参入を図っている。例えばBTSなどのK-POPグループを傘下に擁するハイブも、メイビンに買収を持ちかけた(話はまとまらなかった)。K-POPのグループはアフロビーツやナイジェリアの言葉を楽曲に取り入れているが、この点はナイジェリアのアーティストの間で賛否が分かれるところだ。
音楽産業と映画産業は石油産業に次ぐナイジェリアの輸出産業で、それを支えているのはスポティファイやブームプレイといった配信サービスだ。ストリーミングが普及する前は、音楽は海賊版のCDとして流通するのが主で、アーティストは作品への正当な対価を受け取れなかったし、外国のオーディエンスに楽曲を届けるすべもなかった。
23年にナイジェリア国内で新興企業が集めた投資のうち、エンタメ関連企業が占める割合はわずか3%だった。だが被雇用者の数で言えば、クリエーティブ産業は石油産業に次いで第2位だ。
米政府はアフリカ諸国との貿易関係強化に向け「プロスパー・アフリカ(アフリカに繁栄を)」という取り組みを行っている。最近ではアメリカの投資家にアフリカのクリエーティブ産業への投資を促している。
ワシントンに本拠を置くクパンダ・キャピタルが19年にメイビンに対して行った出資は、世界向け広告戦略の原資になった。ユニバーサルはクパンダの出資を先行事例として挙げ、買収によりメイビンは「世界に向けてさらに多くの才能をブレイクさせる」ことが可能になるとしている。
国際金融公社(IFC)によれば、アフリカのクリエーティブ産業は2000万人の雇用を生み出す可能性があるという。もしアメリカが本気で中国やロシアからアフリカを引き離すつもりなら、そんなポテンシャルあふれる産業に投資するのはいい手ではないだろうか。