最新記事
エンタメ

米中韓が熱視線...アフリカの音楽産業が「いい投資先」と言えるこれだけの理由

African Music Goes Global With Universal Deal

2024年4月18日(木)11時31分
ノズモット・グバダモシ(ジャーナリスト)

グラミー賞のトロフィーを掲げるタイラ

タイラはグラミー賞の最優秀アフリカン音楽パフォーマンス賞を受賞 EMMA MCINTYRE/GETTY IMAGES FOR THE RECORDING ACADEMY

投資の地政学的な意味

アメリカと中国が世界で影響力を競っているこの時代、アフリカのクリエーティブ産業への投資はアメリカにとってこれまでに増して重要になっている。

中国はアフリカにおける投資先として、今後発展が望める産業、つまりインターネットを介したゲームやエンターテインメントの分野に注目している。具体的には光ファイバーケーブルの敷設や安価なスマートフォン販売をはじめ、配信サービスの立ち上げといったネットインフラへの投資を行っている。アフリカのインターネット網の約50〜70%は華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が手がけたものだ。

また、アフリカでスマホを最も多く売っているのは、中国の携帯電話メーカー、伝音控股(トランシオン)だ。同社が15年にナイジェリアで事業を開始したブームプレイは、アフリカで最も人気の音楽配信サービスとなっている。

一方で韓国企業もナイジェリア市場への参入を図っている。例えばBTSなどのK-POPグループを傘下に擁するハイブも、メイビンに買収を持ちかけた(話はまとまらなかった)。K-POPのグループはアフロビーツやナイジェリアの言葉を楽曲に取り入れているが、この点はナイジェリアのアーティストの間で賛否が分かれるところだ。

音楽産業と映画産業は石油産業に次ぐナイジェリアの輸出産業で、それを支えているのはスポティファイやブームプレイといった配信サービスだ。ストリーミングが普及する前は、音楽は海賊版のCDとして流通するのが主で、アーティストは作品への正当な対価を受け取れなかったし、外国のオーディエンスに楽曲を届けるすべもなかった。

23年にナイジェリア国内で新興企業が集めた投資のうち、エンタメ関連企業が占める割合はわずか3%だった。だが被雇用者の数で言えば、クリエーティブ産業は石油産業に次いで第2位だ。

米政府はアフリカ諸国との貿易関係強化に向け「プロスパー・アフリカ(アフリカに繁栄を)」という取り組みを行っている。最近ではアメリカの投資家にアフリカのクリエーティブ産業への投資を促している。

ワシントンに本拠を置くクパンダ・キャピタルが19年にメイビンに対して行った出資は、世界向け広告戦略の原資になった。ユニバーサルはクパンダの出資を先行事例として挙げ、買収によりメイビンは「世界に向けてさらに多くの才能をブレイクさせる」ことが可能になるとしている。

国際金融公社(IFC)によれば、アフリカのクリエーティブ産業は2000万人の雇用を生み出す可能性があるという。もしアメリカが本気で中国やロシアからアフリカを引き離すつもりなら、そんなポテンシャルあふれる産業に投資するのはいい手ではないだろうか。

Foreign Policy logo From Foreign Policy Magazine

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ドイツ銀行、第3四半期の債券・為替事業はコンセンサ

ワールド

ベトナム、重要インフラ投資に警察の承認義務化へ

ワールド

台湾、過去最大の防衛展示会 米企業も多数参加

ワールド

アングル:日米為替声明、「高市トレード」で思惑 円
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中