最新記事
動物

自然が生んだ「奇跡の光景」...南極で撮影されたクジラのバブルネット・フィーディングの「完璧な螺旋」

Mesmerizing Moment Humpback Whales 'Encircle and Trap Prey' in Antarctica

2024年1月4日(木)15時15分
スー・キム
ザトウクジラのバブルネット・フィーディング

Danita Delimont/Shutterstock

<2頭のザトウクジラが完璧に連携することで生まれた、驚くべき自然の光景が南極の海で映像に収められた>

南極大陸で、2頭のザトウクジラが協力して魚の群れを捕らえる壮観な光景が撮影された。この貴重な瞬間を捉え、SNSに投稿したオランダの写真家でドローンパイロットのピート・ファン・デン・ベムは、「ザトウクジラの、感動的で協調的な狩猟方法だ」と本誌に語った。

■【映像】自然が生んだ「奇跡の光景」...南極で撮影されたクジラのバブルネット・フィーディングの「完璧な螺旋」

1年のうち約4カ月を南極で、約5カ月を高緯度北極圏で過ごしているファン・デン・ベムは、今回の映像について「2頭のザトウクジラが連携してバブルネット・フィーディングをしている」と話した。極地に滞在中に「時々」目撃するものの、「まれな出来事だ」という。

「今回はクジラが完璧な動きを見せた。フィボナッチ(らせん)の形が完璧に作られ、信じられないような、決して忘れることのできない瞬間となった。このように撮影できたのは初めてだ」

米海洋大気庁(NOAA)によると、バブルネット・フィーディングとは、ザトウクジラが「泡を出して作った網で魚を捕らえ、狭い範囲に囲い込み、ろ過摂食する大きな口で効率よく魚をすくい上げる」行動だ。

ザトウクジラは協力して泡の輪や網を作り、「獲物を取り囲む」ことで「小魚やオキアミ(小さなエビのような甲殻類)を混乱させ、捕らえる」とファン・デン・ベムは述べる。

クジラの高い社会的知性を示す

米国立海洋保護区財団はバブルネット・フィーディングについて、「コミュニケーションと協力を必要とする、複雑で高度に同期された行動で、高い社会的知性を示す」と説明する。「1頭のクジラが先導し、他のクジラがそれに続く。リーダーは通常、泡を吹く役割を担い、他のクジラは魚を取り囲み、らせん状に泳いで海面に追い込む」

ザトウクジラは、口を大きく開けて餌を一気に飲み込む。バブルネット・フィーディングでは、「口を開けたままバブルネットの中心を泳ぎ、集まった獲物を食べる」とファン・デン・ベムは言う。ファン・デン・ベムによれば、オキアミは様々な海洋生物の主要な食料源として、南極の生態系の重要な構成要素となっているという。

彼はインスタグラムの投稿に、こう記している。「2頭のザトウクジラがシンクロしてバブルネット・フィーディングをする、魅惑的なダンスを目撃した。自然の完璧なコラボレーションが波の下で繰り広げられている」

この映像にユーザーは圧倒されたようだ。「素晴らしい。完璧に連動してらせんを描いているバブルフィーディングだ」「壮観だ! 私も冒険に出たくなった」というコメントや、「ありえない」「貝殻みたい」という感想もある。

あるユーザーは、「アラスカでバブルネット・フィーディングを見たことがあるが、船からではこの景色は見られない」と述べている。


ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機

ビジネス

再送米経済「対応困難な均衡状態」、今後の指標に方向

ビジネス

再送MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中