最新記事
昆虫

なぜ日本のカブトムシだけが独自進化? オスのケンカ必勝法・メスの交尾スタイル、どれも海外に例がなく大きな謎

2023年8月30日(水)12時40分
小島 渉(山口大学理学部 講師) *PRESIDENT Onlineからの転載

カブトムシのメスは生涯に一度しか交尾をしない

カブトムシの形態のほかのユニークな特徴として、オスの方がメスよりも大きな体を持つことが挙げられます。これは昆虫としては例外的であり、他の多くの種では、多くの卵を産むためにメスの方が大きな体を進化させています。

カブトムシの場合、オスの大きな体は、角と同様、他のオスとのけんかを通して進化してきたと考えられています。けんかに勝つためには大きな武器を持つだけでは十分ではなく、それを使いこなすためのパワーが必要になります。そのため、大きな武器と連動して、大きな体が進化してきたと考えられます。

カブトムシの配偶行動はユニークで、謎に満ちています。特に興味深いのは、メスが生涯に一度しか交尾をしないという点です。

ほとんどの昆虫のメスは生涯に複数のオスと交尾をします。しかし、カブトムシのメスは、一度目の交尾を終えるとその直後から、オスがどんなに求愛してきても、かたくなに交尾を拒否し続けます。

オスは交尾の際に、精包とよばれる、米粒ほどの大きさのカプセルを、メスの体内に送り込みます。精包を受け取ったことがきっかけとなり、メスはオスを拒否するようになるようです。しかし、なぜカブトムシがこのような特殊な性質を進化させたのかは分かっていません。

日本のカブトムシにしかない例外的な特徴

じつは、海外の大型の種を含め、カブトムシの仲間の他の種の多くは、メスが生涯に複数のオスと交尾します。つまり、日本のカブトムシが例外なのです。

「カブトムシの謎をとく」カブトムシのオスは、目の前にいるメスが交尾を終えているかが分からないようで、いくら拒否されても、メスの体の上に乗り、求愛を続けます。求愛中のオスは腹部(あるいは後翅)と前翅をこすり合わせて独特の歌を奏でます。その音はかなり大きく、私は夜の森で、この音を頼りにカブトムシを探すこともあるほどです。

しかし、どれほど長い時間オスが求愛歌をメスに聞かせても、メスの気が変わることはめったにありません。そのため、何のためにオスはこのような求愛行動を進化させてきたのかは大きな謎です。私たちの研究室では、この謎を解明すべく、調査を進めています。

今後の研究の進展にご期待ください。

小島 渉(こじま・わたる)

山口大学理学部 講師
1985年生まれ。2013年に東京大学大学院農学生命科学研究科で博士(農学)を取得。その後、日本学術振興会特別研究員を経て、現職。著書に『わたしのカブトムシ研究』(さえら書房)、『不思議だらけ カブトムシ図鑑』(彩図社)、『カブトムシの謎をとく』(ちくまプリマー新書)がある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ2都市にロシアが攻撃、和平協議直後

ビジネス

乳児ボツリヌス症の集団感染、バイハート社の粉ミルク

ワールド

北朝鮮抑止「韓国が主な責任」、米国防総省が関与縮小

ワールド

トランプ政権のEVインフラ助成金停止は違法、米地裁
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投稿したアメリカを嘲笑する動画にネット爆笑
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    トランプを支配する「サムライ・ニッポン」的価値観…
  • 9
    「これは違法レベル...」飛行機で「史上最悪のマナー…
  • 10
    3年以内に日本からインドカレー店が消えるかも...日…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 9
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中