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なぜ日本のカブトムシだけが独自進化? オスのケンカ必勝法・メスの交尾スタイル、どれも海外に例がなく大きな謎

カブトムシのメスは生涯に一度しか交尾をしない

カブトムシの形態のほかのユニークな特徴として、オスの方がメスよりも大きな体を持つことが挙げられます。これは昆虫としては例外的であり、他の多くの種では、多くの卵を産むためにメスの方が大きな体を進化させています。

カブトムシの場合、オスの大きな体は、角と同様、他のオスとのけんかを通して進化してきたと考えられています。けんかに勝つためには大きな武器を持つだけでは十分ではなく、それを使いこなすためのパワーが必要になります。そのため、大きな武器と連動して、大きな体が進化してきたと考えられます。

カブトムシの配偶行動はユニークで、謎に満ちています。特に興味深いのは、メスが生涯に一度しか交尾をしないという点です。

ほとんどの昆虫のメスは生涯に複数のオスと交尾をします。しかし、カブトムシのメスは、一度目の交尾を終えるとその直後から、オスがどんなに求愛してきても、かたくなに交尾を拒否し続けます。

オスは交尾の際に、精包とよばれる、米粒ほどの大きさのカプセルを、メスの体内に送り込みます。精包を受け取ったことがきっかけとなり、メスはオスを拒否するようになるようです。しかし、なぜカブトムシがこのような特殊な性質を進化させたのかは分かっていません。

日本のカブトムシにしかない例外的な特徴

じつは、海外の大型の種を含め、カブトムシの仲間の他の種の多くは、メスが生涯に複数のオスと交尾します。つまり、日本のカブトムシが例外なのです。

「カブトムシの謎をとく」カブトムシのオスは、目の前にいるメスが交尾を終えているかが分からないようで、いくら拒否されても、メスの体の上に乗り、求愛を続けます。求愛中のオスは腹部(あるいは後翅)と前翅をこすり合わせて独特の歌を奏でます。その音はかなり大きく、私は夜の森で、この音を頼りにカブトムシを探すこともあるほどです。

しかし、どれほど長い時間オスが求愛歌をメスに聞かせても、メスの気が変わることはめったにありません。そのため、何のためにオスはこのような求愛行動を進化させてきたのかは大きな謎です。私たちの研究室では、この謎を解明すべく、調査を進めています。

今後の研究の進展にご期待ください。

小島 渉(こじま・わたる)

山口大学理学部 講師
1985年生まれ。2013年に東京大学大学院農学生命科学研究科で博士(農学)を取得。その後、日本学術振興会特別研究員を経て、現職。著書に『わたしのカブトムシ研究』(さえら書房)、『不思議だらけ カブトムシ図鑑』(彩図社)、『カブトムシの謎をとく』(ちくまプリマー新書)がある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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