最新記事

日本史

「明治維新は薩長によるテロ」 『青天を衝け』で維新賛美の歴史観から脱却したNHK

2021年10月16日(土)12時40分
香原斗志(歴史評論家、音楽評論家) *PRESIDENT Onlineからの転載
渋沢栄一の像

<これまでのNHK大河ドラマは、どれも明治維新を賛美するものだった。しかし現在放送中の『青天を衝け』は違う。歴史評論家の香原斗志さんは「『青天を衝け』は明治維新を薩長によるテロとして描いている。非常に画期的なことで、もっと注目されるべきだろう」という――>

明治政府は「勝者」によってつくられた

身分に縛られ、年貢など重い課役に苦しめられる封建制を壊し、開明的な世のなかを実現して、近代化への道筋をつくった――。そんなふうに明治維新をポジティブに受け入れている人が多い。

実際、学校でもそう教えている。

文科省中学学習指導要領には、「明治維新と近代国家の形成」という単元で学ぶ目標について、「明治維新によって近代国家の基礎が整えられて、人々の生活が大きく変化したことを理解すること」と明記。さらには、「近代国家を形成していった政府や人々の努力に気付かせるようにすること」とまで書かれている(注1)。

その記述を間違いとまでは言えない。だが、「明治維新」が「近代国家を形成」するための唯一の道だったのか、と言う問いには、私は強く「否」を唱えたい。

なぜなら、明治維新とは、すでに幕藩体制が終焉し、挙国一致で近代化を進めようとしていたにもかかわらず、主導権を握りたい薩摩藩や長州藩、一部の公卿が強引に起こしたものだからである。

「歴史とは勝者の歴史」という言葉を思い出してほしい。歴史とは、勝った側が残したい記録だけを記したものだという意味で、この場合の勝者は明治政府である。

明治政府の歴史観は、いまの政府も継承している。

事実、日本の政治システムは、明治政府が導入した内閣制度、立憲および議会政治の流れを汲んでおり、その姿勢は、2018年に「明治150年」を祝った際の「明治の歩みをつなぐ、つたえる」というキャッチコピーに、象徴的に表れている(注2)。

しかし、「明治の歩み」は、無批判に「つなぐ」「つたえる」対象にするにしては、あまりにも謀略的、暴力的で、血なまぐさく、モラルに欠ける。

そして、意外にも、そのことをいまNHKがわかりやすく伝えている。実業家の渋沢栄一を主人公にした大河ドラマ『青天を衝け』である。

維新を賛美する「司馬史観」からの脱却

これまで幕末から明治期を描いた大河ドラマは、1968年の『竜馬がゆく』を皮切りに、大村益次郎を描いた『花神』(1977年)、西郷隆盛と大久保利通が中心の『翔ぶが如く』(1990年)、『徳川慶喜』(1998年)と、司馬遼太郎が原作のものが多かった。

司馬遼太郎による歴史の見方は俗に「司馬史観」と呼ばれる。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾海峡で「戦闘準備パトロール」 米議員団

ビジネス

米経済に勢い、緩和縮小加速に前向き=アトランタ連銀

ビジネス

焦点:米テック企業に広がる労組結成の波、経営陣は対

ワールド

南アは透明性を持って行動、渡航制限は不当=保健相

MAGAZINE

特集:AI戦争の時代

2021年11月30日号(11/24発売)

人工知能を持つ戦闘マシンが自らの判断で敵を殺す ──「核より恐ろしい」新型兵器が現実の戦場に現れた

人気ランキング

  • 1

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 2

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「両親」になった

  • 3

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督のマーベル映画『エターナルズ』

  • 4

    多数の難民を受け入れたスウェーデンが思い知った「…

  • 5

    ナイキのシューズがクリスマス、いや来年夏まで入荷…

  • 6

    あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃…

  • 7

    今度はディオールの写真を「人種差別」と吊し上げた…

  • 8

    現在の経済混乱は企業が続けてきた「ケチ経営」のツ…

  • 9

    EVは地球に優しくても人間に優しくない一面をもつ──…

  • 10

    日本のコロナ感染者数の急減は「驚くべき成功例」─英…

  • 1

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 2

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「両親」になった

  • 3

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督のマーベル映画『エターナルズ』

  • 4

    あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃…

  • 5

    勝海舟があっさり江戸城を明け渡した本当の理由 「無…

  • 6

    ナイキのシューズがクリスマス、いや来年夏まで入荷…

  • 7

    セブンイレブンに「来店」したクマ、感染症対策も欠…

  • 8

    多数の難民を受け入れたスウェーデンが思い知った「…

  • 9

    突然の激しい発作に意味不明の言葉──原因は20年前に…

  • 10

    コーギー犬をバールで殺害 中国当局がコロナ対策で.…

  • 1

    【動画】リビングの壁を這う「猫サイズ」のクモ

  • 2

    一番人懐こいネコの品種は?甘え過ぎへの対処法は?

  • 3

    最初から「失敗」が決まっていたクロエ・ジャオ監督のマーベル映画『エターナルズ』

  • 4

    子供が欲しかった僕は、女友達と恋愛抜きで子供の「…

  • 5

    「可愛すぎて死にそう」ウサギを真似してぴょんぴょ…

  • 6

    ネコはいつでも飼い主を思っていた...常に居場所を頭…

  • 7

    突然の激しい発作に意味不明の言葉──原因は20年前に…

  • 8

    時代に合わなくなったヒーロー「ジェームズ・ボンド…

  • 9

    あなたはいくらエクササイズしても痩せない 脂肪燃…

  • 10

    背中を売ってタトゥーを刻む『皮膚を売った男』の現…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月