最新記事

私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】

中国人コスプレイヤー、同人誌作家、買い物客はこんな人たち(コミケ97ルポ)

2020年2月1日(土)19時45分
高口康太(ジャーナリスト)

HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

<オタクの祭典であるコミケには海外からの参加者も多い。なぜ中国の美女が日本でコスプレを? どんな人がどんな同人誌を? 中国からスーツケース持参でいくら使う?――真冬の熱狂に迫った。本誌「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集より>

「世界的な展示会ですから! 参加できて、とてもうれしい」
20200204issue_cover200.jpg
2019年の年末、東京ビッグサイトは人の波でごった返していた。来場者数はこの日だけで19万人。会場入り口では通勤電車並みの密度で並んだ。噂には聞いていたが、よもやこれほどとはと早くも絶望的な気持ちとなる。

コミックマーケット、通称コミケ。日本各地からオタクが集まるビッグイベントとして有名だが、実は海外からの参加者も多い。実数は定かでないが、とりわけ多いのが中国人だ。外見だけでは日本人と区別のつかない彼ら中国人参加者たちの話を聞いた。

magSR200201comiket-2.jpg

南京から来た筱蝶と球球(写真は全て2019年12月30日) HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

冒頭の言葉は南京から来た女性2人組、筱蝶(シアオ・ティエ)と球球(チウチウ)のものだ。2人とも大きなトランクを持っての会場入り。中を見せてもらうと、同人誌やグッズでいっぱいだ。友人から頼まれたものも多いが、総額で20万円以上は使ったという。

中国には日本のコミケ情報を翻訳して紹介するSNSアカウントがいくつもある。それらを見て事前に買い物リストを作っていたのだとか。

「コミケは楽しい。今回は第97回なので、次は第100回に来たいな。記念になりそうだから」

magSR200201comiket-3.jpg

戦利品を見せてくれた上海出身のGGToria HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

20万円も使うなんて......と驚いた取材陣だが、上には上がいた。埼玉の大学に留学中という上海出身の男性、GGToriaは「予算? (開催期間の)4日間合計で100万円は使わないよ。50万円は使うと思うけど」とのこと。コミケでしか買えない限定グッズが楽しみで、毎回通っている。

「中国のイベントには同人文化がない。日本のコミケは素晴らしい」

一方、買い物よりも雰囲気を楽しみたいという人も。

「オタクの聖戦と呼ばれるコミケ、人生で一度は参加してみたいと思うのは自然なことだ」と仰々しく話したのは、安徽省出身の徐冬睿(シュイ・トンルイ)。北海道大学で法学を学ぶ大学院生だ。

「中国のイベントにも通ったが、企業の出展ばかりで商業的だし、販売されているグッズもネットで買えるようなものばかり。つまり同人文化がない。やはり日本のコミケは素晴らしい」と、彼は言う。

「そして日本のアニメも素晴らしい。伝統文化と比べると軽んじられることが多いと聞くが、アニメほど世界中の青少年の心をつかんでいる日本文化はない」

magSR200201comiket-4.jpg

安徽省出身の大学院生、徐冬睿(右)と浙江省出身の馮 HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

ただ、法学を学ぶ身として、徐には不思議に思っていることがあるという。コミケと日本の著作権法の関係だ。

「厳密に言えば、著作権法違反になる同人誌が多数あるにもかかわらず、著作権者が黙認するのが一般的。このグレーゾーンの上にコミケという世界的なビッグイベントが続いているというわけだ。素晴らしいイベントなのだから、明確に合法化されるような法制を考えたほうがいいのではないか。将来、私の学んだ知をこういう問題の解決に生かすことができたらいいのだが......」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中