中国人コスプレイヤー、同人誌作家、買い物客はこんな人たち(コミケ97ルポ)
HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN
<オタクの祭典であるコミケには海外からの参加者も多い。なぜ中国の美女が日本でコスプレを? どんな人がどんな同人誌を? 中国からスーツケース持参でいくら使う?――真冬の熱狂に迫った。本誌「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集より>
「世界的な展示会ですから! 参加できて、とてもうれしい」
2019年の年末、東京ビッグサイトは人の波でごった返していた。来場者数はこの日だけで19万人。会場入り口では通勤電車並みの密度で並んだ。噂には聞いていたが、よもやこれほどとはと早くも絶望的な気持ちとなる。
コミックマーケット、通称コミケ。日本各地からオタクが集まるビッグイベントとして有名だが、実は海外からの参加者も多い。実数は定かでないが、とりわけ多いのが中国人だ。外見だけでは日本人と区別のつかない彼ら中国人参加者たちの話を聞いた。
冒頭の言葉は南京から来た女性2人組、筱蝶(シアオ・ティエ)と球球(チウチウ)のものだ。2人とも大きなトランクを持っての会場入り。中を見せてもらうと、同人誌やグッズでいっぱいだ。友人から頼まれたものも多いが、総額で20万円以上は使ったという。
中国には日本のコミケ情報を翻訳して紹介するSNSアカウントがいくつもある。それらを見て事前に買い物リストを作っていたのだとか。
「コミケは楽しい。今回は第97回なので、次は第100回に来たいな。記念になりそうだから」
20万円も使うなんて......と驚いた取材陣だが、上には上がいた。埼玉の大学に留学中という上海出身の男性、GGToriaは「予算? (開催期間の)4日間合計で100万円は使わないよ。50万円は使うと思うけど」とのこと。コミケでしか買えない限定グッズが楽しみで、毎回通っている。
「中国のイベントには同人文化がない。日本のコミケは素晴らしい」
一方、買い物よりも雰囲気を楽しみたいという人も。
「オタクの聖戦と呼ばれるコミケ、人生で一度は参加してみたいと思うのは自然なことだ」と仰々しく話したのは、安徽省出身の徐冬睿(シュイ・トンルイ)。北海道大学で法学を学ぶ大学院生だ。
「中国のイベントにも通ったが、企業の出展ばかりで商業的だし、販売されているグッズもネットで買えるようなものばかり。つまり同人文化がない。やはり日本のコミケは素晴らしい」と、彼は言う。
「そして日本のアニメも素晴らしい。伝統文化と比べると軽んじられることが多いと聞くが、アニメほど世界中の青少年の心をつかんでいる日本文化はない」
ただ、法学を学ぶ身として、徐には不思議に思っていることがあるという。コミケと日本の著作権法の関係だ。
「厳密に言えば、著作権法違反になる同人誌が多数あるにもかかわらず、著作権者が黙認するのが一般的。このグレーゾーンの上にコミケという世界的なビッグイベントが続いているというわけだ。素晴らしいイベントなのだから、明確に合法化されるような法制を考えたほうがいいのではないか。将来、私の学んだ知をこういう問題の解決に生かすことができたらいいのだが......」