最新記事

韓国社会

TWICEリーダー、ジヒョの発言で炎上した「웅앵웅」とは? 韓国に広がる男女間ヘイトの炎

2020年1月20日(月)18時50分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

韓国の映画館についてのコメントがもと

では、そもそも、この「웅앵웅(ウンエンウン)」はどこから来た言葉なのだろうか? この単語が使われだした頃までさかのぼってみると、元々はあるSNSで、韓国映画の音声はクリアでなく、聞き取りにくい事への批判について書かれたコメントが由来だった。

投稿者は、「인디 (영화) 대사는 웅...앵웅...쵸키포키...이런다(=インディーズ映画のセリフなんて、ウン...エンウン...チョキポキ...って聞こえる)」と擬音で表現した。これがじわじわとネット上で広まり、決定打となったのが、親韓家&ハングル好きで有名なハリウッド俳優トーマス・マクドネルだ。

マクドネルはTwitterにも韓国語でよく投稿しているが、2017年にハングルで「웅앵웅 쵸키포키(ウンエンウン チョキポキ)」とアップし注目された。後日、マクドネルはインタービューで「字面から気に入った部分だけ切り取ってアップしただけ」と何ら意図しないままの投稿だったとあっけらかんと話している。

TWICEのジヒョの発言が炎上する元となった「웅앵웅(ウンエンウン)」だが、元々の由来はこのように映画の音の悪さへの批判から始まり、アメリカの映画俳優によってさらに知られるようになった流行語だったのだ。

映画関係の単語がいつの間にか男性嫌悪の差別用語になってしまった。韓国では、2016年に女性であるというだけで殺害された「江南駅女性殺害事件」が起こり、「女性嫌悪」という言葉が浸透した。そしてこれに対抗するように、女性たちが男性を批判する「男性嫌悪」も広まり、この頃から急速にフェミニズムが韓国に根付きだしている。

よい意味でフェミニズムが広がりをみせた一方で、男女という性別だけでいがみ合う一部の人たち、また、過剰反応しすぎる人たちによって「웅앵웅(ウンエンウン)」のような流行語が差別用語として再生産されたようにも見える。

「男も差別されている!」との声も

newsweek_20200120_184645.jpg

『웅앵웅』など男女間の嫌悪問題を取り上げた歌を発表したSan EのYouTubeチャンネル。SBS 뉴스 / YouTube

「웅앵웅(ウンエンウン)」が、女性たちによる男性嫌悪の意味として使われている単語なのだとしたら、男性が公でこの言葉を使用した場合どうなのだろう。2018年の12月3日、ラップ歌手San Eが、自身のYouTubeチャンネルを通じその名も『웅앵웅』という楽曲を発表した。しかし、San Eは、これまでフェミニストをディスる作品を何度も発表してたびたび話題となっているのにもかかわらず、今回のジヒョの発言ほどまで大きな問題には至っていない。

San Eはこれまで、男女間の嫌悪問題を表した『フェミニスト』という楽曲で、
「(女性は)そんなに権利と言うなら、なぜ軍隊にいかないのか」
「デートでは俺がなぜ全額支払うのか」
「俺らがいつ美しくいなければいけないと言った? 自己満足で整形しておいて」
など、過激な歌詞を発表している。

さらに、この曲について、韓国の政党パルンミレ党のハ・テギョン議員が自身のSNSで「近頃の20代男性たちの悩みが理解できないと言っている人たちは、San Eのフェミニズムという曲をきいてみろ」「以前は女性への差別が問題だった。しかし、今は男性も差別されている。それなのに社会は相変わらず差別されるのは女性という強固なドグマが根付いている」と取り上げたことでも話題となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中