最新記事

ハリウッド映画化

SF漫画『銃夢』のハリウッド映画化が本格始動――原作者・木城ゆきと氏に聞く

2015年12月14日(月)15時30分
高森郁哉(翻訳者、ライター)

 そこで今回、原作者の木城ゆきと氏にメールインタビューを申し込み、『銃夢』の着想や、実写映画化にかける期待、現実のサイボーグやロボットの技術についての印象などを尋ねた。

――『銃夢』の「闘うサイボーグ少女」という基本コンセプトは、最初どのように思いついたのでしょう? 過去の作品などで参考にしたもの、ヒントになったものなどはありましたか?

 80年代前半のころから、サイボーグテーマに新たな可能性を感じて、いくつかの短編を描いていました。しかしそれらの主人公はみな男性でした。

 89年に描いた絵コンテに女性サイボーグ警官が脇役で登場しました。これが「ガリィ」の初登場です。この絵コンテ作品は結局ボツになったのですが、脇役のガリィに当時の編集者が注目して、その人に勧められて、90年にガリィが主人公の短編の絵コンテを描きました。これが現在の『銃夢』の直接のルーツです。

 『銃夢』のサイボーグのビジュアルイメージは、70年代におもちゃメーカーのタカラ社が発売していた「変身サイボーグ1号」シリーズが大きく影響しています。

――本作の独創的なビジュアルや世界観は、英語版などの出版を通じて海外の作品にも影響を与えてきたように思います。映画に限ってみても、『アンダーワールド』(2003)でケイト・ベッキンセイルが演じたヴァンパイアハンターの外見、『エリジウム』(2013)の地上のスラム街と天空に浮かぶ富裕層の人工都市という世界観などが挙げられますが、これらの作品についてどのような印象をお持ちですか。

 僕も過去のたくさんの作品に影響されて育ってきたので、僕の作品に若い世代の人達が影響を受けているとしたら喜ばしいことです。

――ハリウッド実写映画化についてうかがいます。ジェームズ・キャメロン側による映画化権の獲得はいつ正式に決まったのでしょう?

 たしか2000年の暮れのことだったと思います。

――その後キャメロンは、のちに世界興収歴代1位となるSF超大作『アバター』(2009)を監督したこともあり、『銃夢』映画化のプロジェクトの進展は一向に伝わってきませんでしたが、今年10月にようやく、キャメロン製作、ロバート・ロドリゲス監督という布陣で本格的に動き出すというニュースが届きました。まずロドリゲス監督について、もし好きな作品があれば挙げていただいたうえで、作風の印象などをお聞かせください。

 『デスペラード』『シン・シティ』『グラインドハウス』『マチェーテ』などが大好きです。過激な暴力描写にもユーモアを忘れないところがいいですね。

――キャメロン製作、ロドリゲス監督のタッグに決まったと聞いて、原作者としてはどんな映画になることを期待しますか?

 正直言ってこの二人の組み合わせは予想していなかったのでびっくりです。きっと最高に面白い映画を作ってくれると思っています。

――連載開始の1990年から四半世紀が過ぎて、現実のサイボーグ(義手・義足やパワードスーツを含む広義の意味合いで)やロボットの技術が大きく進歩し、さまざまな分野で普及しつつあります。現在のサイボーグやロボットの技術について、どのような印象をお持ちですか。また、もしご自身で使うとしたら、どのような用途・機能を望みますか?

 いままでフィクションの中でしかなかったサイボーグやロボット技術がどんどん実用化されようとしていて、すごくワクワクする時代ですね。

 ロボットスーツとか買える値段になったら一着ほしいです。脳波で動く義手を4本ぐらい増設して、ものすごい速度で漫画が描けたらいいなぁと思っています。

参考サイト:
木城ゆきと公式サイト・ゆきとぴあ

[執筆者]
高森郁哉
米国遊学と海外出張の経験から英日翻訳者に。ITニュースサイトでのコラム執筆を機にライター業も。主な関心対象は映画、音楽、環境、エネルギー。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中