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映画アンナ・ファリスが語る「嘔吐にまみれたキスシーン」
ダークなコメディー『オブザーブ・アンド・リポート』で化粧品売り場の究極の店員を演じたアンナ・ファリス。付け爪とあばずれ言葉で「イヤな女」を熱演
体当たり 見る人を不快にさせるのが面白いと語るアンナ・ファリス
Phil McCarten-Reutersters
なぜか今年はショッピングモールの警備員を主人公にした2つの映画が公開へ。『ポール・ブラート モール・コップ』の主人公ポール(ケビン・ジェームズ)は、大きな体に似合わず、ほんのかすり傷に「ハローキティ」のばんそうこうを貼る。
4月10日に全米公開されたジョディ・ヒル監督の『オブザーブ・アンド・リポート』では、警備員のロニー(セス・ローゲン)が子供たちの頭をスケートボードでぶん殴る。
反応に困る? それがヒルの狙いだ。ニューヨーク・タイムズ紙に「扱いにくい個性派監督」と評されたヒルは、「コメディー」という言葉を慎重に避ける。今回の作品は暗くて、残忍で、ひねくれていて、深刻な精神疾患の目を通して世の中を眺めている。
郊外の小さな町に対する痛烈な皮肉も、ローゲン演じる警備員の鈍感で短気な性格もあからさまに描かれる。彼がハローキティのばんそうこうを貼ることは絶対にあり得ない。
しかし幸いなことに、笑いの要素もたっぷりある。爆笑を誘う助演陣の中でもピカイチなのが、化粧品売り場の店員ブランディーを演じるアンナ・ファリスだ。『最終絶叫計画』で一躍注目を浴びたファリスは、あばずれ言葉も板につき、グロスでテカテカに光った唇の端を上げた表情は、お客のおなかのぜい肉をせせら笑っているよう。ファリス本人は、演技がリアル過ぎて観客にマジに受け取られないか心配なのだとか。
本誌セーラ・ボールが話題のラブシーンなどについて話を聞いた。
──前作の『ハウス・バニー』は陽気な作品だったのに、今回「警備員版の『タクシー・ドライバー』」に出演することになったのはどうして?
ジョディ・ヒルのデビュー作『フット・フィスト・ウェイ』が好きだったの。クラブかどこかで彼に会ったとき、熱く語り過ぎたんでしょうね。後になって今回の脚本が出来たときに彼が思い描いていたのは(私と)違うタイプの女性で、オーディションを受けさせてもらうまでが大変だった。 脚本を読んで「メジャー作品で女性の主役がこんなにぶっ飛んでるなんてことある? すっごくイイ!」って思った。だから本当に楽しい仕事だった。
──どうやってブランディーに成り切ったのか。
まず付け爪から。もちろん胸を寄せて上げるブラも。
──アメリカ人は彼女をどう思うだろう。
とにかく嫌いになってほしい。終わり近くに私が「よくやったわ、ロニー!」と言い、セスが「くたばりやがれ」と言う場面がある。テキサス州の映画祭では拍手喝采だった。クールだった。彼らが私を嫌いなことがね(笑い)。
──他にウケた場面は?
嘔吐したものが詰まったブランディーの口に、ローゲンがキスをする場面では、間違いなくみんなうめいていた。
──本気でこれをやらせるの、と思ったことは。
正直なところ、本当に大変なときもあった。特に嘔吐の場面とラブシーン。監督以外は全体の調子がわからなかったから、それがとても恐かった。セスも怯えていた。2人で「大丈夫、きっとカットされるから」と言いながら演じてたわ。
──(演出の指示に)従わなかったことは?
(ラブシーンで)「ブラを取ってくれ」と言われたけれど、私はまだ胸を見せるつもりはない。(女優として)劇的な転機まで待つ。ところで教えてちょうだい。あの場面を見たら嫌な気分になる?
──あなたが薬を飲まされて気を失う場面は確かに「やり過ぎだ」と思った。でも、意識を取り戻したあなたが意外なタイミングでそのことを笑い飛ばしたときは、客席全体がほっとした。それに好きかどうかはともかく、誰でも知り合いに彼女のような女性がいる。
(笑いながら)そうね。この作品がいいのは、まるで悪びれていなくて、とても不快なところ。最初に見た後は「最悪」と思った。でも、そこが魅力なのよ。ジョディは「自己検閲をしていたらかなりのものを失っていた」と言っていた。その通りだと思う。
──人々は目くじらを立てるだろうか。
母には「DVDが出るまで待てば? 早送りできるから」と言っておいた。両親が応援してくれるのはとてもうれしいけれど、私は本当に厳しく育てられたから。
──どんなふうに?
テレビは基本的に見させてもらえなかった。名作劇場をときどき。友達の会話に入れなくて、8歳の子供には苦痛だった。でも両親は私を誇りに思っている。特に父は、母にいつも「あの子は役を演じている」と言ってくれる。よくここまで理解してくれたと思う。
──ブランディーは化粧品売り場の究極の店員だと思う。まさに彼女のような店員に私は何度も会った。どんな役作りをしたのか。
子供の頃、ショッピングモールが大好きだった。化粧品売り場の店員はとても格好良くて華やかで、記憶に残っていた。でも今回は、役が決まってから撮影が始まるまでわずか1週間。ジョディーは具体的なイメージを描いていて、付け爪みたいに小さなことがとても重要だった。私の嫌いなリップグロスも、どうしても塗ってと言われた。
──彼のイメージをそのまま演じたのか、それとも自分で役を膨らませたのか。
一緒に役を作り込んでいった。そういうやり方が私は好き。
──今回は嘔吐物にまみれて、『ジャスト・フレンズ』では青い歯磨き粉を塗られた。べたべたした液体には慣れた?
そうね。体液関係には慣れた。『最終絶叫計画』では大量の精液で天井に撃ち上げられたもの。もうやけくそ。『最終絶叫計画』シリーズで経験を積んだのは良かったと思う。体を張ったコメディーは初めてだったから、最高の勉強になった。
──体を張ったコメディーの極意とは?
見る人を少し不快にさせるのが面白い。そして、そこまでやるには固い決意が必要だということ。