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早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

2024年6月10日(月)17時53分
松田 小牧(ライター)*PRESIDENT Onlineからの転載

かつては年金受給開始年齢も早かった。1941年4月2日より前に生まれた場合、60歳で報酬比例部分と定額部分を足し合わせた年金をもらうことができた。

それ以降はまず定額部分の支給開始年齢が、次いで報酬比例部分が引き上げられたが、1953年4月2日より前に生まれていれば、60歳から報酬比例部分の年金をもらうことができていた。

報酬比例部分も定額部分もなくなり、完全に65歳からの支給となったのは、1961年4月2日生まれ以降の人である。また2015年までは共済年金の制度があり、公務員はいまよりも手厚い保障となっていた。そのうえ、退職金も昔のほうが多かった。そして税金と物価はかつてよりも上がっている。

退職金が大きく下がったのは「官民格差是正」のためだが、日本全体が貧しくなっていることが、自衛官にも大きな影響を与えている。

【「幹部でなければ年収200万円でよしとしなさい」】

防衛省としては、再就職先の給与と若年退職給付金を足し合わせて現職時代の75%の給付水準を目標としている。民間企業においても、55歳ごろに役職定年が設定され、その後給与が下がるケースもあれば、60歳を区切りに給与を下げるケースも多い。

一般的には、60歳を過ぎると以前の7割程度の給与水準となっているようだ。

また自衛官以外の公務員でも、定年年齢が引き上げられつつあるものの、60歳に達した職員は原則として管理職から外す「役職定年制」の導入や、給与を60歳時点の7割水準とすることが決められている。

そんな中で、本当に自衛隊を去った自衛官が、現役時代の75%を確保することができるのであればまず悪くない話だ。しかし、これはあくまで「目標」であり、達成されていないケースも多い。

やはり先の章で、「再就職後の給与平均は尉官で400万円前後、准曹で300万円台」とも述べたが、これも「平均」にすぎない。東京付近の求人が平均給与を押し上げており、地方に行けば行くほど厳しい現状がある。

とりわけ東北や九州など、とくに求人が少ない地域では、尉官であっても200~250万円ほどの給与水準の地域もある。加えて求人の多くが、警備や輸送といった体力勝負の業務であることも事実だ。

【元自衛官に対する民間企業の不満】

なお自衛隊援護協会によると、退職自衛官の平均月収は2015年時点で22万2400円。一番多いのは15万円以上~21万円未満の44.3%であり、次に21万円以上~30万円未満で32.4%、30万円以上が13.5%となっているが、15万円未満も9.8%と決して少なくはない。

実際、地方で再就職を支援する立場に就いたことがある元自衛官は、「幹部でなければ『年収は200万円あればよしとしなさい』と指導していた」と振り返る。

現職の年収とのギャップの大きさや、現場仕事が多い求人に不満を漏らす者もいると言うが、「自衛官の持つスキルを考えれば、その年収が現実。それに我慢できなければ、自分で探すしかない」と話す。

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