中国人の仏ワイナリー「爆買い」が止まらない ...投資家たちの 「本当の」 狙いと成功のカギとは?
CHINESE CHATEAUX
JillWellington-Pixabay
<フランス・ボルドー地方の名門シャトーが次々と中国人の手に。買収で廃れるシャトーも栄えるシャトーもあるが、その差はどこにあるのか──>
2012年以降、フランスのボルドー地方では、中国の投資家に買収された名門シャトー(ワイン醸造所)が200以上に上る。
有名なところでは、電子商取引大手アリババの共同創業者であるジャック・マーが、アントゥル・ドゥー・メール地区のシャトー・ドゥ・スールなど、いくつかのシャトーを購入している。俳優で映画監督のビッキー・チャオもサンテミリオン地区のいくつかのシャトーを買収した。
このような名門シャトーの買収は、ファイナンス論の研究者から酷評されることが多い。シナジー効果をほとんど、もしくは全く生み出さず、失敗することが避けられないように見えるためだ。
実際、中国の投資家に買収された後、そのまま放置されて廃れてしまったボルドーのシャトーは少なくない。新しいオーナーが当初の情熱を失い、再び売りに出されたケースも50件ほどあるという。
しかし、もう少し丁寧に検討すると、中国人によるシャトーの買収が全て失敗に終わっているわけではない。
筆者らは、08~15年に中国人投資家により買収されたボルドーのシャトー123カ所について買収後の成績を調べてみた。すると、買収が実際に価値を生み出しているケースもあった。
買収動機がカギを握る
ただし、それは経済的価値ばかりとは限らない。新しいオーナーは、シャトーを所有することにより、社会的な威信を得ている場合がある。
そのようなオーナーは、買収したシャトーを自分の分身のように考え、ことのほか大切にする。施設を改修したり、最新の醸造技術を導入したり、トップクラスの醸造家を招いたり、ワイン畑の木を植え替えたりするのだ。
そうした努力の結果、シャトーが経営破綻を回避し、有力なワインガイドのランキングで順位が上昇する場合もある。アシェット社のワインガイドでは近年、中国人が所有するシャトーのいくつかが目覚ましい躍進を遂げている。
香港で金融業と通信業で富を築いたアンドルーとメロディーのクック夫妻は13年、ポムロール地区のシャトー・ラ・コマンドリーを購入した。夫妻が設備と建物の改修に力を入れた結果、このシャトーで生産されるワインは、数年でボルドーワインのランキングの常連になった。
メディアで大々的に取り上げられるのは主として、既に社会的地位を確立している中国人大富豪がシャトーを買収した事例だ。そのようなケースは、新しいオーナーが自身の社会的地位を高めるという明確な戦略の下でシャトーを買収するケースとは明らかに性格が異なる。
既に社会階層の頂点に立っている人たちは往々にして、シャトーを買収しても経営にはあまり真剣に取り組まない。この場合、シャトーの成績は買収後に悪化することが少なくない。
結果を分けるのは、新しいオーナーがシャトーの所有を通じて国際的エリートへの仲間入りを狙っているかどうか。それによって、ワインは甘くもなれば酸っぱくもなる。
Alexandre Bohas, Professeur d'Affaires internationales, ESSCA School of Management and Pierre-Xavier Meschi, Professeur des Universités en sciences de gestion, Affillié à Skema Business School, IAE Aix-Marseille Graduate School of Management - Aix-Marseille Université
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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