最新記事
中国経済

中国、景気停滞の次は余剰在庫のダンビング輸出? 欧米当局が警戒

US Warns China Against Predatory Dumping To Save Economy

2024年2月21日(水)17時26分
マイカ・マッカートニー
湖南省郴州市の電子部品工場

湖南省郴州市の電子部品工場(2月18日)(Photo by Costfoto/NurPhoto)

<中国の最新の統計が示すのは、供給優先で需要を置き去りにしてきたことだ。これからまた、中国政府の補助金で不当に安くなった中国製品が世界市場にあふれるのではないか>

中国が停滞する製造部門をてこ入れするために、世界市場に低価格製品の洪水を起こしたら、アメリカは対抗措置をとる、と米財務省高官が明言した。

「他の国々も同調するだろう。これは反中ではなく、中国の政策に対抗する動きだ」と、ジェイ・シャンボー財務次官(国際問題担当)はフィナンシャル・タイムズに語った。

 

中国統計局が発表した1月の購買担当者景気指数(PMI)からは、生産は増加したものの、製造業の需要は低迷し、前月比でわずかながら業績が改善したのは大企業のみだったことがうかがえる。

中国政府が企業に提供する補助金は、他の主要経済国よりもはるかに多い。アメリカの有力シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書によれば、その額は控えめに見積もっても2019年の名目ベースで2480億ドルに及ぶ。中国政府が産業支援に費やす資金は、アメリカの2倍以上になると見られている。

米政府高官や企業経営者は、中国の電気自動車(EV)とソーラーパネルに特に懸念を抱いている。中国が製造する太陽光パネルは、世界市場の80%以上を占め、中国車は2022年の世界のEV販売台数の60%以上を占めている。

中国の競争優位性は、アメリカにおけるソーラーパネルとEV産業の存続を脅かす可能性がある。ジョー・バイデン大統領は2022年にEVのサプライチェーンに700億ドル以上、太陽光発電関連に100億ドル以上の資金を投入するインフレ抑制法に署名した。

EUも反補助金調査に

シャンボーは5人の財務省高官を率いて北京を訪れ、2月6日に中国側とさまざまな問題について話し合った。その中には、気候変動のような潜在的な協力分野だけでなく、中国政府の補助金の問題も含まれていた。補助金は中国の製造業の過剰供給を助長し、作り過ぎた低価格製品の投げ売るような戦略を後押することになるのではないか、とアメリカは懸念している。

「われわれが懸念しているのは、中国の産業支援政策と、需要を顧みず供給にばかり重点を置いたマクロ政策のせいで、中国のが大量の在庫が世界市場を直撃する事態に向かっていることだ」と、シャンボーは語った。

懸念しているのはアメリカだけではない。欧州連合(EU)は23年10月、急増する中国製EVの欧州輸入について反補助金調査を開始すると発表した。EU委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、中国製EV車の価格は、中国政府による「巨額の補助金」によって「人為的に低く抑えられている」と述べた。

20日の記者会見でEUの調査について質問された中国外務省の毛寧(マオ・ニン)副報道局長は「中国の自動車産業は飛躍的な発展を遂げ、高い品質を備えたコストパフォーマンスの高い製品を世界に提供してきた。中国から輸出される自動車の3台に1台は電気自動車であり、世界のグリーン・低炭素化に大きく貢献している」と述べた。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、3会合連続で金利据え置き 今後の道筋示さず

ビジネス

米メタ、250億ドルの社債発行へ 最長40年債も=

ビジネス

エヌビディアCEO、サムスン・現代自会長と会談 A

ワールド

イスラエル軍、ガザで新たな攻撃 ハマスは人質2遺体
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中